目指せ!第二の仲邑菫さん 0歳から絵本で囲碁 2児の父「碁盤なくても親しむ」布石に

樋口薫 (2018年2月15日付 東京新聞夕刊)
 ゼロ歳から囲碁に親しんでほしい-。育児休暇中の子育て体験を機に、そんな願いを持ったパパが一冊の絵本を作った。折しも囲碁界では「天才少女」仲邑菫(なかむらすみれ)さん(9つ)のプロ入りが話題になるなど、低年齢での育成効果に注目が集まっている。作者の会社員森善哉(ぜんさい)さん(43)=埼玉県川口市=は「自宅に碁石や碁盤がない家でも、この絵本で子どもが碁に触れる環境を整えてほしい」と呼び掛ける。

絵本「ぱちんぱちん」を出版し、2人の子どもと碁石で遊ぶ森善哉さん=埼玉県川口市で

読み聞かせに9カ月長男大喜び 2歳長女はすでに碁石並べ

 碁盤の目に置かれた白や黒の碁石。ページをめくると、てるてる坊主やアリさんに変身する。

 森さんが昨夏から3カ月かけて描き上げた絵本「ぱちんぱちん」。地元出版社「T&K」と交渉し、今年初めに出版した。森さんが自宅で読み聞かせると、生後9カ月の長男裕哉(ゆうさい)ちゃんは大喜び。長女彩乃ちゃん(2つ)は既に絵本を見ながら碁盤に石を並べ始めている。

育休中に執筆 サクランボや雪だるまをキャラクターに

 森さんは、父親の影響で高校時代に囲碁を始め、大学では囲碁部に所属。東京都千代田区の日本棋院でアルバイトをするなど、囲碁一筋の学生時代を送った。社会人になって一度離れたが、2016年に彩乃ちゃんが生まれて1年間の育休を取ったのを機に、地元の囲碁クラブに通い、児童らに教えるようになった。

 昨年に裕哉ちゃんが生まれ、再び1年の育休を取得。その期間を利用し、絵本の制作を思い付いた。「子ども向けに囲碁のルールを教える本はあっても、もっと幼い子が楽しめる絵本は見つからない。自分で作ることにした」

 森さんは1度目の育休中に国家試験を受け、保育士の資格を取得。執筆に際しては、その時学んだ知識を盛り込んだ。「読み聞かせる親が『これなぁに?』と語り掛ける内容なら、生後6カ月でも楽しめる。描くキャラクターはサクランボや雪だるまなど、子どもの好きなモチーフを選びました」

ページをめくると…↓

絵本「ぱちんぱちん」の一こま。二つの白石を雪だるまに見立てている

プロを目指さなくても「逆境を打開する思考力が育つ」

 4月に史上最年少でのプロ入りが決まった仲邑さんは3歳で囲碁を覚え、今や第一人者の井山裕太五冠(29)に絶賛される打ち手となった。「絵本で囲碁に興味を持った子は、ルールを覚えるのも早いのでは」と森さんは期待する。また、プロを目指すわけではない子にも、囲碁は教育的な効果があると強調する。「自分の意図していない状況になっても決して感情的にならず、局面を打開する手段を考える力がつく」

 絵本の購入はインターネット書店「アマゾン」から。1080円。問い合わせはT&K=電話048(271)9356=へ。