記者が親子で「囲碁教室」体験!大人も子どもも真剣勝負!

樋口薫 (2018年9月18日付 東京新聞朝刊)
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「石取りゲーム」でお姉さんと対戦する樋口記者の長女(左)

〈バン記者・樋口薫の棋界見て歩き〉
 藤井聡太七段(16)の活躍に影響されたらしく、長女(5つ)が最近、将棋を始めました。囲碁・将棋担当の父としてはうれしい限りですが、できれば囲碁にも関心を持ってほしい。そう思っていたところ、日本棋院のホームページで「夏休み・こども囲碁塾」の案内を発見。全く初めてでも参加OK、保護者も一緒に学べると書いてあります。長女も乗り気だったので、3日間の囲碁教室に申し込んでみました。

※新聞の「番記者」とは、特定対象者を追う記者のことです。ここでは政界の「番記者」ならぬ、盤上で戦う囲碁・将棋の世界「棋界」の「バン(盤)記者」がお届けします。

教室は超満員、プロ棋士やアシスタントが手厚く指導

 8月下旬、はしゃぐ長女を静めつつ満員電車で東京・市ケ谷の日本棋院へ。会場に着いてびっくり、1階ホールが親子連れでいっぱいです。受講者は約300人に上ったそうです。習熟度に応じて4クラスに分かれ、上の2クラスはプロ棋士が講師を務めます。長女は1番下の入門クラス。オセロ盤より小さな7路盤で基礎の基礎を学びます。

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入門クラスで使われた「ななろのご」(幻冬舎)。馬に見立てた石と牧場に見立てた盤のデザイン

 入門クラスの子どもは4歳から小6まで34人。5~8歳くらいが中心でしょうか。24人の保護者も一緒に教わります。講師の熊坂直子さんは小学校で囲碁教室を開いているそうで、子どもの扱いはお手の物。石の置き方や取り方について、質問を交えながら、てきぱきと指導していきます。高校生や大学生のアシスタントが何人も付いてくれ、手厚い態勢です。

 「次に石が取られる状態を何という?」との質問で当てられた長女。「アタリ!」と正答し、教室中の拍手を受けてうれしそう。予習させておいて良かった、と父は胸をなで下ろします。次は少し難問。「囲碁の『囲』の意味は分かる?」。調子に乗って手を挙げた長女の答えは「体の中の『胃』!」。残念、それは教えてなかった…。

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こども囲碁塾の授業風景。みんな真剣に先生の話を聞いている

子どもに勝てなくて悔しい!大人も真剣

 30分ほどの授業の後は、生徒同士「石取りゲーム」で対戦です。石を囲い合って先に3つ取った方が勝ちという簡単なルールですが、意外と奥が深く、大人も真剣な表情。記者は初心者ではなく少し打てるのですが、対戦に加わらせてもらいました。

 打ちながら参加の理由を尋ねると、「子どもに勝てないので悔しくて」「碁石アートを見て興味を持った」など、答えはさまざま。雑談しながら対局を楽しむうち、あっという間に2時間が過ぎていました。

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初めて囲碁を学ぶ保護者と対戦する樋口記者(右)。実は娘とおそろいで、囲碁にちなんだ白黒のチェック柄

 2日目は、より囲碁のルールに近い「陣地取りゲーム」を教わり、最終日は「コウ」「死活」など囲碁特有の概念を学びます。勉強より対戦が中心なので、長女も集中力を切らさずに受講できました。最後に「30級」の認定状を受け取り、ご満悦の様子。親子で楽しめ、夏休みの思い出になった3日間でした。

上達への近道は教えすぎず、楽しく打つこと!

 今後、家で子どもに教える時のコツはあるのでしょうか。講師陣の1人で、20年以上子どもに教えてきたプロ棋士の鶴丸敬一・七段(48)に尋ねると、「教えすぎちゃだめ。とにかく楽しく打たせて」との回答。「大人は理屈を教えないと納得しないけど、子どもだと嫌になってしまう。まず好きになってもらうことが肝心なので、少しでも良いところをほめてあげてください」

 なるほど、参考になります。受講後、長女から「囲碁やろうよ」と誘われるようになりました。追い抜かれる日も、そう遠くないかもしれません。

取材を終えて

 長女の3日間の成績は12勝15敗。同世代の子とたくさん対局できて大喜びでした。「どこに打つの?」とつぶやきながら対局していたそうです。父親としては、ひとりで授業を受けられた成長ぶりに感動。うらやましそうにしていた長男(4つ)も、次回は連れて行ってあげたい。

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記者の質問に答える鶴丸敬一・七段

「判断力が磨かれます」鶴丸敬一・七段に聞きました

 -子どもを指導する時に気をつけていることは

 「盤上では自由に、自ら発見できるよう導き、個性を伸ばすことを心掛けています。強くなるには心の成長が1番なので、礼節を重んじます」

 -囲碁に教育的な効果はあるか

 「思考力や忍耐力、集中力が育ち、判断力が磨かれます。学力の向上につながる子が多いです。礼節が身につくので、厚みのある人格形成にも役立ちます」

 -プロを目指す子に必要なことは

 「何よりも碁を優先させるほど好きになり、覚悟を持つこと。努力を継続する力が必要です」

こども囲碁塾

 日本棋院が長期休み中に開催する、短期集中型の囲碁教室。今夏は8月上旬と下旬に2回開催された。対象は4歳から高校生で、下から入門(7路盤)、9路盤、13路盤、19路盤の4クラスがある。いずれも料金は3日間で5000円(テキスト代含む)。参加者は全員、成績に応じて棋力を判定してもらえる。参加費2000円で、保護者も入門、9路盤、13路盤クラスのいずれかを受講できる(保護者のみの参加は不可)。事前申し込みが必要で、次回は冬休みに開催予定。詳細は日本棋院のホームページから。

 囲碁・将棋のさまざまな話題を担当記者がお届けする「バン記者・樋口薫の棋界見て歩き」を東京新聞朝刊で毎月第3火曜日に掲載しています。
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  • 匿名 says:

    こんな教室があること初めて知りました!!
    わたしも子供がいるのでこういう教室に参加させてみたいなぁと思いました!!囲碁や将棋って、私も無知なのでなかなかハードルが高いものに感じていましたが、このような教室があれば楽しく興味を持って遊びながら学んでくれそうですね!

      
  • 匿名 says:

    樋口記者の娘さんが、イキイキと囲碁を楽しむ姿がとても微笑ましい!記事を読んだ後、私も30級から始めてみたくなりました。
    長女と長男の対決もまた記事にして欲しいです。今後も楽しみにしています!

      

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