「小学生の甲子園」全1000選手の肩肘チェック 1日70球制限も導入 勝敗の前に選手の健康守ろう
医師と理学療法士が検診「指導者の意識を変えたい」
「1日70球」という今回のルール改正について、導入の旗振り役となった同連盟の宗像豊巳専務理事は「大切なのは数字よりも、あくまで選手の健康を守るのだという指導者の意識。そこを変えたい」と説明した。
検診は医師と理学療法士計25人がエコー検査や理学的所見により行い、問題が見つかった選手には医療機関での受診を促す。一人一人の結果だけでなく、全体で見たときのデータとしての役割や、来年以降も検診を続けてデータを積み重ねることも重要視しているという。
大会は23日まで、神宮球場を中心に都内球場で行われる。
旗振り役の専務理事「4割が肩肘に違和感。待ったなし」
他の守備位置についた投手の「再登板」も禁止
-「1日70球」ルール導入の決断は昨年中か。
「去年12月の理事会だった。学童選手の4割は肩や肘に違和感を持ちながら野球をやっている、もう待ったなしだと」
-反対意見は。
「なかった。チーム編成や投手育成など、不安は感じているようだったが」
-新ルールは、今年は全国大会で導入する一方、都道府県予選は1年の猶予期間を設けた。各地の導入状況は。
「半数ほどが『1日70球』を(予選で)適用してくれたようだ。大会が進んだ準々決勝からといった地区もある」
-大会特別規則で、一度、他の守備位置についた投手の再登板禁止も打ち出した。
「再登板禁止については、根拠となるデータがあるわけではない。ただ、医師に意見を求めると、ケガのリスクは高まると。70球という数にも、異論があるのは承知している。ただ、数字ありきではなく、目的はあくまで選手の故障リスクを排除すること。指導者の意識改革を促すためのルール導入だ。勝利至上主義ではなく、選手育成こそが最優先なのだと」
先行導入した徳島県 故障率が5~8%下がった
-大会3日目にダブルヘッダーが組まれている。投球過多と同様に、トーナメント戦の過密スケジュール見直しも必要では。
「今回も苦渋の決断だったが、会場確保の兼ね合いなどから決めた。今後、選手の健康を第一に考えると、予選リーグの導入なども含めて、競技形式を考え直す必要性も感じている」
-全選手を対象に行う肘と肩の検診については。
「群馬・慶友整形外科病院の古島弘三先生をまとめ役に、医師15人、理学療法士10人のメンバーで検診を行う。学童選手は投手、野手にかかわらず、4割ほどが肘・肩に違和感を持っていると言われている。一方、全国に先駆けて、昨年から70球ルールを導入している徳島県の徳島大・松浦哲也先生によれば、ルール導入後の追跡調査で故障率が5~8%下がったという」
-効果はあるということか。
「これまでの検査は抽出で行っているが、今大会は出場選手全員が対象。”故障者探し”ではなく、出てくるデータが貴重なものになる。検診を毎年行い、データを蓄積していくことも重要だ。連盟としては、小・中学生選手たちの健康カルテをシステム化して、いずれは高校野球にまでつなげて行けたらとも考えている」