「小学生の甲子園」全1000選手の肩肘チェック 1日70球制限も導入 勝敗の前に選手の健康守ろう

鈴木秀樹 (2019年8月12日付 東京新聞朝刊)
 高校野球で投手の球数制限のルール化が議論される中、「小学生の甲子園」といわれる高円宮賜杯第39回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント(8月18日開幕、全日本軟式野球連盟、東京新聞など主催)で、投手の投球数を「1人1日70球以内」に制限するルールが新たに導入される。18日には、明治神宮野球場で行われる開会式に続き、参加51チームの全選手約1000人を対象に、肩と肘の一斉検診も行う。同連盟によると、一斉検診は全国大会で初めての試み。
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7月に行われた都知事杯学童軟式野球大会では、チーム関係者が対戦相手投手の投球数を手動でカウントした(鈴木秀樹撮影)

医師と理学療法士が検診「指導者の意識を変えたい」 

 「1日70球」という今回のルール改正について、導入の旗振り役となった同連盟の宗像豊巳専務理事は「大切なのは数字よりも、あくまで選手の健康を守るのだという指導者の意識。そこを変えたい」と説明した。

 検診は医師と理学療法士計25人がエコー検査や理学的所見により行い、問題が見つかった選手には医療機関での受診を促す。一人一人の結果だけでなく、全体で見たときのデータとしての役割や、来年以降も検診を続けてデータを積み重ねることも重要視しているという。

 大会は23日まで、神宮球場を中心に都内球場で行われる。

旗振り役の専務理事「4割が肩肘に違和感。待ったなし」

 8月18日に明治神宮野球場で開幕する高円宮賜杯第39回全日本学童軟式野球大会(東京新聞など主催)で導入される投手の「1日70球」制限ルールと、全選手対象の肩・肘検診について、全日本軟式野球連盟の宗像豊巳専務理事にその意義などを聞いた。
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投球制限ルールと検診実施について説明する全日本軟式野球連盟の宗像豊巳専務理事=東京都内で

他の守備位置についた投手の「再登板」も禁止

 -「1日70球」ルール導入の決断は昨年中か。

 「去年12月の理事会だった。学童選手の4割は肩や肘に違和感を持ちながら野球をやっている、もう待ったなしだと」

 -反対意見は。

 「なかった。チーム編成や投手育成など、不安は感じているようだったが」

 -新ルールは、今年は全国大会で導入する一方、都道府県予選は1年の猶予期間を設けた。各地の導入状況は。

 「半数ほどが『1日70球』を(予選で)適用してくれたようだ。大会が進んだ準々決勝からといった地区もある」

 -大会特別規則で、一度、他の守備位置についた投手の再登板禁止も打ち出した。

 「再登板禁止については、根拠となるデータがあるわけではない。ただ、医師に意見を求めると、ケガのリスクは高まると。70球という数にも、異論があるのは承知している。ただ、数字ありきではなく、目的はあくまで選手の故障リスクを排除すること。指導者の意識改革を促すためのルール導入だ。勝利至上主義ではなく、選手育成こそが最優先なのだと」

先行導入した徳島県 故障率が5~8%下がった

 -大会3日目にダブルヘッダーが組まれている。投球過多と同様に、トーナメント戦の過密スケジュール見直しも必要では。

 「今回も苦渋の決断だったが、会場確保の兼ね合いなどから決めた。今後、選手の健康を第一に考えると、予選リーグの導入なども含めて、競技形式を考え直す必要性も感じている」

 -全選手を対象に行う肘と肩の検診については。

 「群馬・慶友整形外科病院の古島弘三先生をまとめ役に、医師15人、理学療法士10人のメンバーで検診を行う。学童選手は投手、野手にかかわらず、4割ほどが肘・肩に違和感を持っていると言われている。一方、全国に先駆けて、昨年から70球ルールを導入している徳島県の徳島大・松浦哲也先生によれば、ルール導入後の追跡調査で故障率が5~8%下がったという」

 -効果はあるということか。

 「これまでの検査は抽出で行っているが、今大会は出場選手全員が対象。”故障者探し”ではなく、出てくるデータが貴重なものになる。検診を毎年行い、データを蓄積していくことも重要だ。連盟としては、小・中学生選手たちの健康カルテをシステム化して、いずれは高校野球にまでつなげて行けたらとも考えている」

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