やっぱり「勝利至上主義」…部活動時間の上限守られず センバツ出場校「練習減らして強化進んだ」例も

(2019年3月23日付 東京新聞朝刊)
 良い結果を出すためにはそれなりの練習が必要だ-。運動部活動指針の順守について選抜高校野球出場校に聞いたアンケートには、活動時間を減らすことに否定的な意見が相次いだ。一方、少数ではあるものの、見直して「強化が進んだ」と回答した学校もあった。

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罰則ない指針、「強化が遅れる」と敬遠

 「指針通りでは強化は絶対に無理」。平日は5時間、週末には7時間の練習をしている東北地方の学校は、こう断言する。

 指針には、罰則規定がない。守るかどうかは実質的に学校の裁量に任されており「順守したチームほど強化が遅れる」と、敬遠する高校は少なくない。活動時間を減らすなどの見直しをした12校のうち3校は、その影響で「強化が遅れた」と答えた。

 九州地方の公立高校は「順守はまず公立から求められる。寮や合宿所がある(私立)学校は守らないのでは」と不満を漏らす。ほかにも「自由時間が増えると、非行に走る時間を与えかねない」との懸念や「練習試合の準備や、他校などへの移動に時間がかかる」との意見もあった。

週末練習を1時間減→賛否は半々

 一方で、練習時間を減らしたことで「強化が進んだ」と答えた学校が、関東地方に1校あった。6時間だった週末の練習を1時間削減。当初は部員や保護者の間で「そういう時代」と理解する声と「もっと練習を」と反対する声が半々だった。しかし、量をこなす日と実戦の日を分けるなど工夫した結果、技術向上につながったという。

 もともと練習時間が短めの学校や、時間を短縮した学校からは前向きな意見もみられた。関東地方の高校は「全ての部活動が月曜休み。生徒の負担軽減や教員の働き方改革の観点からも、指針に近づけようと考える」と説明。自主練習用のチェックシートを導入したり、メンタルトレーニングやミーティングを重視するなど、短い時間で効率を上げる試みもあった。

「子どもの安全や健康を最優先すべき」

 指針を検討した有識者会議では、長時間練習で子どものけがが増えるほか、週6日以上の部活動にはほとんどの生徒が「休みたい」と感じるという調査結果も報告され、時間短縮の必要性が議論された。国際オリンピック委員会は2008年、ジュニアアスリートの育成について、十分な睡眠と学業、心身の健康、社会参加などバランスの取れた生活ができるよう、練習量の制限を提言している。

 アンケート結果について、名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「勝利至上主義の文化は変わっていない。部活動は教育現場で行われる以上、子どもの安全や健康を最優先した上で大会や競技のあり方を考えるべきだ」と指摘。「例えば『活動は週3日』と決め、守らないチームは出場できなくするなどの方法もある」と提案する。

厳しい指導求める声、生徒や保護者からも

 高校野球で頑張ることが将来のプロ入りや就職につながることもあり、生徒や保護者側から厳しい指導を求める面もある。日本部活動学会会長の長沼豊学習院大教授(教科外教育)は、サッカーのJリーグの育成組織などを例に挙げ「競技の高度化は学外で行うべきだ」と話している。

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