〈ペアレント・トレーニング〉取り組むポイントは? うまくいかない時は?

(2019年10月25日付 東京新聞朝刊)

 9月に連載を終えた「笑顔が増える ペアレント・トレーニング」。1年間アドバイスを受けてきた小児科医の長瀬美香さん(51)と臨床心理士の三間直子さん(49)に、あらためてペアトレの意義や、うまくいかない時にどうしたらよいかを聞きました。(過去の記事一覧はこちら

小児科医の長瀬美香さん㊧と臨床心理士の三間直子さん=東京都板橋区の心身障害児総合医療療育センターで

「今できていること」をほめると、子どもは頑張れる

 -なぜ、ペアトレに取り組むのでしょう。

 三間 子とよい関係を築く一つの方法と捉えてほしいです。子への対応法を学んできましたが、目標は「親子の穏やかな時間が増えること」。子どもの笑顔や親が怒らない時間が増えたら、うまくできている証拠です。

 -子をほめるのが難しいという声も多いです。

 長瀬 お子さんの行動を、そのまま言葉にするだけでもいいんです。「歯磨きしてるね」と笑顔で。子どもって、今を認めてもらえると自分から頑張れるんです。親の肯定的な反応や言葉で「これをするのはいいことなんだ」と気付くので、「○○しなさい」と指示をしなくても動けることが増えていきます。

 気を付けたいのは、前と比べたり、次に期待したり、皮肉を込めたりしないこと。「今日はできたね」「明日もこうだといいな」「言われなくてもできるといいんだけどね」は避けましょう。よりよくなってほしい親心から言いがちですが、条件を付けず、目の前の行動を純粋にほめた方が子どももよりうれしいです。

小児科医の長瀬美香さん

「親がしてほしい行動」を求めていませんか?

 -声かけをしていても好ましい行動が引き出せない場合は。

 三間 無理なことを求めていないでしょうか。「親がしてほしい行動」ではなくて「子ができそうな行動」を求めましょう。

 長瀬 第1回でお伝えしたように、子の行動を具体的に書き出して、「好ましい」「好ましくない」「危険/許しがたい」の3つに分類するのは効果的です。今、子どもが楽にできている「好ましい行動」をほめてあげることで、他のことでも頑張ろう、という気持ちが出て好循環になることが多いです。

臨床心理士の三間直子さん

親の側にも余裕が必要 できそうな日にやってみる

 -子の行動に、ついイライラしてしまうという人も少なくありません。

 三間 イライラしたり、感情的になりやすいのは、時間に追われている、片付けが大変など、自分の都合が原因のことも多くはないでしょうか。「ほめる」のも「気付かないふりをして待つ」のも親の側に余裕がないとできません。空腹や睡眠不足、疲れや心配事など、心身のコンディションに左右されるので、親自身が自分をいたわることも大事です。

 長瀬 平日は余裕ある対応が難しいと感じるなら、休日など待ってもいいと思える日にやってみるので十分です。「25%できたらほめる」のは親も一緒。ほんの少しでも「穏やかに指示ができた」「ほめられた」と思ったら自分をほめてくださいね。

 -ペアトレではうまくいかない時はどうしたらよいでしょうか。

 三間 ペアトレは、一般的な子育てにも、発達障害のお子さんとの関わりにも役立つものです。しかし、ほめたくても気持ちがついていかない時や、お子さんの発達や情緒面で気がかりがある場合、このペアトレだけではうまく回らず、専門的な支援が必要なこともあります。まずは身近な学校・園の先生や保健師に相談し、一緒に考えてもらいましょう。

※「ペアレント・トレーニング」の連載は、こちらから読めます。