〈ペアレント・トレーニング〉11・子どもへの罰「○○しないなら△△だよ」は有効?→まずは9点をチェック!

(2019年8月2日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

笑顔が増える ペアレント・トレーニング

 「ペアレント・トレーニング」の第11回は、「子どもに罰を与えること」について考えます。子どもが危険な行為や許しがたい行動をやめない時、親はどうしても「○○しないなら(○○をやめないなら)△△だよ」と言ってしまいがちです。でも、小児科医の長瀬美香さんによると「罰の設定は、あくまでも最終手段」。罰を宣言する前に、親が振り返ってみるべきポイントが9つあるそうです。今回はいよいよ、第1回の「子どもの行動を3つに分ける」で分類した「危険/許しがたい行動」への対応がテーマです。これまで学んできたペアレント・トレーニングの内容の総復習でもあります。子どもへの罰を設定する場合の注意点もお伝えします。(過去の記事一覧はこちら

悩み「危険な行為をやめない息子。罰を設定してもよいですか?」

 小学3年生の息子は、歯磨きをしながら歩き回るので危険です。「今すぐやめないと、何かを禁止する」と罰を設定してもいいですか?

解決のヒント「まずは親が9点の『振り返り』を。罰を設定する場合は、大きすぎず短めに」

<小児科医・長瀬美香さんから>

 大きなけがにつながるような行動は、親としては見ていられませんよね。その場ではいったんやめさせるにしても、罰を持ち出す前に一度、「穏やかに近くで指示を繰り返せたか」など、これまでこの連載で紹介してきた子どもへの声かけができているか確認しましょう。

子どもの好ましい行動を増やすためには、
・ささいな好ましい行動でもほめる
・ほめるために待つ
・好ましい行動に導く指示をする
…といったことが大切だとお伝えしてきました。

次に紹介する9点、できているでしょうか。

イラスト

 親がこうした試みをした上で、それでも駄目なら、最後のチャンスとして、「警告」を与えます。警告は、指示に従えなかった場合の罰を宣言することです。

 警告のポイントは、「○○しなかったら(し続けるなら)△△だよ」と、やめてほしい行動・すべき行動と、従わなかった時の罰を明確に示すこと。例えば、積み木を投げ続ける子には「やめないと、どうなるか分かってるよね」ではなく、「もし積み木を投げ続けたら、20分間、積み木を使えないことにするよ」と具体的な言葉で伝えます。

 罰はできるだけ問題となっている行動と関係のある内容にします。もちろん体罰は禁止です。罰を与える上で大切なのは、「適切な行動を取れば、早く楽しむ権利が戻ってくる」と子が経験すること。ですから、大きすぎず、短めのものにします。「楽しみにしていたお出かけをやめる」のは親子ともにつらいですし、「積み木を1週間禁止する」では、頑張れば報われると、すぐに体験できません。

 警告を与えた後、子どもがすべき行動を取れたらすぐにほめましょう。従えなければ罰を実行しますが、終了したらこの件にはもう言及しません。

「振り返り表」のPDFファイルを、こちらからダウンロードできます。

担当記者がやってみると

 表の9点を試しても、歯磨き中に歩くのをやめない息子に「座って歯磨きをしないなら、10分間、何もせずにいすに座らせるよ」と警告。それでも座らないので、歯磨き後に罰を実行しました。「ただ座っているのは、つまらない」と感じたようで、翌日は「座ってね」と伝えるだけで、サッといすに座って歯磨きを再開。「座って歯磨きしてくれると、危なくなくてお母さんも安心」と声をかけました。

 後日、宿題をせずにテレビの野球中継に夢中になっている小学5年生の娘に対しても、9点の振り返りを念頭に置いてやりとりをしてみました。「宿題を終わらせてからにして」と親としては当然思うのですが、娘にとっては今一番の関心事。問答無用でテレビを消すと娘との関係が悪くなりそうで、どうしたものかと日々もんもんとしていました。

 (今回相談した小児科医の長瀬美香さんによると、このケースが本当に「許しがたい行動」と言えるかどうかは人によって違うそうです)

 まず、娘に穏やかな声で「宿題を終わらせてから見なさい」と伝えました。家事をしながら5分間待ちましたが、動かないので「今すぐ消して宿題を始める? それとも、この回が終わってから消す?」と聞きました。しかし、「えー」と言って不満そう。

 「宿題を始めないなら、いいところみたいだけど今すぐ30分間テレビを消すよ」と警告したところ、「分かった、この回が終わったら消す」と答えました。約束を守ったので、「ちゃんと消せたね」とほめると、「チャンスの場面が終わるまで待ってくれてありがとう」と言って、ようやく宿題に取り組み始めました。

 一度も声を荒らげずにやりとりできたこと、最近反抗期の娘から「ありがとう」の言葉が出てきたこと。どちらもうれしかったのですが、一番ほっとしたのは、娘との仲が険悪にならずにこの問題を解決できたことです。「○○しないと△△だよ」。ついつい使ってしまいますが、その前にできることがまだいくつもあるのだと実感しています。

 「ペアレント・トレーニング」は発達障害児の親向けに採り入れられることが多い手法で、子育てのさまざまな場面で有効です。「お母さん、いつも怒ってるよね」と言われてしまった5歳、小学3年、5年の3児を子育て中の記者が、実際にペアレント・トレーニング講座を受講。実施経験が豊富な、心身障害児総合医療療育センター(東京都板橋区)の小児科医・長瀬美香さん(50)と臨床心理士・三間直子さん(47)に、声掛けや振る舞い方のヒントをいただきながら進みます。

※「笑顔が増える ペアレント・トレーニング」は毎月第1金曜に掲載します。次回9月6日は、いよいよ最終回です。

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