〈口唇裂の子と育つ・上〉生まれつき裂けた上唇縫う手術受けた三男、元気に2歳半 親が唯一、病気を意識する場面とは…

山口哲人 (2020年3月13日付 東京新聞朝刊)
 第4子の三男が「口唇裂」で生まれたのを機に、2017年7月、育児休業を取得をした東京新聞政治部の山口哲人記者。家事・育児に励む様子を「第4子 パパ初育休~口唇裂の子を迎えて」として連載しました。その後の三男の成長ぶりと見守る家族を2回にわたって紹介します。

生後2カ月半で受けた手術痕が、上唇の右側から鼻にかけて薄く残る三男

歯磨きで「ギャン泣き」 虫歯大敵、矯正必須の歯並び

 唇が裂ける先天性の病気「口唇裂(こうしんれつ)」で生まれた第4子の三男が2歳半となった。生後2カ月半で受けた上唇の手術痕も目立たなくなり、身長87センチ、体重11.2キロと体も大きくなっている。子育て中も病気を意識することはない。ある場面を除いては…。

 「ギャーーーッ」

 いわゆる「ギャン泣き」をされるのが歯磨き。中学1年の長女(13)と小学4年の長男(10)、2年の次男(8つ)もこの頃は嫌がって大暴れしていたので想定内だった。でも、固く結んだ口をこじ開けると「絶望的」な歯並び。前歯1本は斜めに曲がって、隣の歯は内側に落ち込んで生えている。病気だと再認識させられる。

 口唇裂や、口の中の上部が裂ける「口蓋裂(こうがいれつ)」の問題の1つが歯並びの悪さ。ブラシが届きにくい場所もあり、医師から虫歯に気を付けるよう注意されている。5歳ごろから歯の矯正が始まる。虫歯は大敵だ。三男が気乗りしない時は手足を押さえ、妻(39)と2人がかりで歯磨きをする。

歯以外は健康 単身赴任で「あんよ」の瞬間見逃し残念

 ただ歯を除けば、心身共に健やか。1人で歩けるまでに成長した。政治部の記者として働く私(39)は2018年10月から半年間、沖縄県の琉球新報社との記者交流で単身赴任。この間に、三男が一歩を踏み出した。歴史的瞬間に立ち会えなかったのが心残りでならない。

 三男が生まれた後、人生初の育児休業を取得した。家事・育児の大変さを心底感じたものの、今は平日夜に散発的に皿洗いをする程度。それを挽回すべく、休日はきょうだいの習い事の送迎などの合間を縫って買い物をし、土日の食事はほぼ記者が作る。週明けの妻の負担が減ればと、作り置きすることもある。

 口蓋裂の子は、のどの弁がうまく働かず、発音障害が起きやすい。発声時に鼻に空気が抜け、フガフガと聞こえることもある。三男も走るバスを見て「バフ」と呼び、発音障害を疑ったことも。また、きょうだいが記者を「お父さん」と呼ぶのに、三男はなぜか「パーさん」とか「ポーさん」と呼ぶ。

右上の歯並びが悪い=いずれも都内の自宅で

兄姉から「王子様」扱い 「もっときれいに」2度目の手術へ

 でも三男は幸い口唇裂だけ。割れ目も手術でふさいだので大丈夫そう。今では「バス」と正しく発音できる。それどころか、年の離れた弟とあってきょうだいから「王子様」扱い。一緒に遊ぶうちどんどん口達者になっている。

 三男が生まれる前、実は「口唇・口蓋裂の子を愛せるだろうか」と尻込みしていた。不安は初対面の瞬間に吹き飛び、ずっとこのままでも構わないとさえ思うほどだった。手術で唇はつながったが、鼻が少しゆがんでいたり、上唇から鼻に赤い線が残っていたりする。でも全く気にならない。かわいくて仕方がない。

 一方、主治医からは「もっときれいにしましょう」と提案された。昨年10月、2度目の手術を受けることになった。

【続きはこちら】〈口唇裂の子と育つ・下〉ママと初めて離れ離れの入院手術 「ワンチーム」で乗り越えられるか

コメント

  • 人それぞれ、何もない、という方は少ないと思う。表面に出るかではないでしょうか。私は生きている今を大事にして自分の周りの方が、自分にある幸福をみつけ、1度しかない、今を生きて欲しい。