第4子パパ初育休~口唇裂の子を迎えて(2)好奇の目?勝手に感じ、おびえていた

山口哲人 (2018年1月18日付 東京新聞朝刊)

写真は小学校や幼稚園があるのに、なかなか起きてこない3人

小学校や幼稚園があるのに、なかなか起きてこない3人

 昨年7月中旬に始まった私(37)の育児休業。妻(37)から期待された主な任務は、エネルギーが有り余る上の子3人の世話と家事だ。家事には自信があったが、単に「できる」ことと、子どもたちの攻撃を受けながら効率的にこなすことの違いを実感させられた。

起こし、朝食、園送り 上3人の世話に汗だく

 育休初日。妻と赤ちゃんはまだ病院だ。朝6時半に起きて朝食を作り、布団にしがみつく小学5年の長女(11)、2年の長男(8つ)を引きはがす。テレビの前で固まる子どもたちに身支度させ、8時までに送り出す。合間を縫って洗濯機を回す。都内の自宅は狭小な3階建てで、洗濯物は4階の屋上に干す。階段の上り下りだけで汗だくだ。

慣れない幼稚園「分からないことが分からない」

 9時には幼稚園年長の次男(6つ)を自転車で送る。園では、ママたちのまなざしが「誰のパパ?」と好奇に満ちているようで、突き刺さるように感じられた。この日は早速、上履きとプールセットを忘れ、幼稚園と自宅を2往復するはめに。事務職員さんから「分からないことがあったら何でも聞いてくださいね」と優しく声を掛けてもらうも、悲しいかな、何が分からないのかも分からない。


〈前回はこちら〉(1)決意「お父ちゃん、今度こそ頑張る」


 翌日、出席した保護者会も、男性は圧倒的少数で「アウェー」の雰囲気。何人ものママから「困ったことがあったら遠慮なく言ってね」と温かいお言葉をいただいたが、顔と名前が一致せず、愛想笑いを浮かべるうちにまた消耗する。早く夏休みに入ってほしい…。

 妻と赤ちゃんの入院は、約1週間だった。子どもたちが通園、通学しているわずかな時間を見計らい、病院に通った。赤ちゃんは、上唇が裂ける口唇裂(こうしんれつ)があるため、GCUと呼ばれる回復治療室に入っていた。

 この病気で大変なのが、外見もさることながら、授乳に難があることだ。上手に吸えないため、しばらくは鼻に挿入したチューブからも母乳を入れていた。

写真は口唇裂のため、鼻に挿入したチューブからも授乳した=2017年7月、都内の病院で

口唇裂のため、鼻に挿入したチューブからも授乳した=2017年7月、都内の病院で

上の子3人は「かわいい」…予想外のリアクション

 GCUでの面会は両親と祖父母以外は禁止。上の3人の子は生まれてきた弟と早く会いたがったが、退院するまでお預けとなった。代わりにGCUで撮った写真を見せると、外見を気持ち悪がるどころか「かわいい」と、予想外のリアクションだった。

 昔、口唇裂は「兎唇(としん)」とか「三つ口(みつくち)」と言われ、差別されたと聞く。そうしたこともあって、曽祖母には赤ちゃんの顔を見せることをちゅうちょしていた。でも生後2カ月半で口唇裂の最初の手術を終えた後に、初の対面。そのときの曽祖母に、ひ孫の外見を憂う様子は全くなかった。

 手術前に赤ちゃんに会った上の子たちの友達も、同じ反応だった。「お口どうしたの?」と聞きはするが、「病気なんだ」と答えると「そっか」で終わり。幼稚園で感じた気がしたママたちの視線もしかり。私が「好奇のまなざし」を勝手に感じ、おびえていただけかもしない。

入社12年目の政治部記者(37)が、昨年7~9月に育児休業を取得しました。典型的な仕事人間だった筆者の奮闘を、5回にわたって連載します。

〈次回はこちら〉(3)妻が「鬼」になったのは、私のせいだ

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  • 匿名 says:

    素敵ですね。
     自分は、娘を育てることが出来ませんでしたから、まだ辛いです。

      
  • 匿名 says:

    記事拝見しました。私は今から41年前に口蓋裂で生まれました。口のなかも喉の手前まで割れ、鼻の回りの骨があちらこちら足りなく、鼻が片方だけ傾いていました。初めての手術を受けたのは生後半年。体力がないと手術ができないと言われ、母は一日に何度もオッパイを絞りスポイトで飲ませてくれていたそうです。二つ上の兄は何でもないのに、どうしてこの子だけこんなことに、と、同居していた父方の祖母言われたと聞きました。「三ツ口」だから人前には出さないように言われたこともあったと話してくれました。母方の祖母が「他の子達と何も変わらないっ‼️」と一喝、それからは私の世話は全て祖母が行うようになったそうです。
    成人まで成長に合わせ何度も手術を受けました。話すと息漏れをしてしまう為、言語教室へ通い、噛み合わせが悪い為、歯科矯正を行い、両親は毎月受診で大変だったと思います。
    見た目でいじめも受けました。ですが、両親、兄はいじめられた話をすると「だから?」って言うんです。人は見た目ではない、相手にしないで、好きなようにしなさい。と、両親もとても強い気持ちで受け止めてくれました。
    23歳で結婚をし、4人の子供に恵まれました。出産の度に口蓋裂を心配しました。遺伝してしまったら…と。でも、元気一杯何もなく産声をあげてくれ、母にも「元気一杯で良かったね」と言われ、何だか凄く解放されたような不思議な感じがしました。
    母は私に対して少し負い目があったようです。ですが、どんなときも一番側で支えてくれていたことに心から感謝しています。
    口蓋裂で産まれたから可哀想、人目にさらして大丈夫だろうか、なんて気にしないで下さい、ご両親、ご兄弟の前向きな姿が子供を元気一杯にしてくれます。辛いことも経験の一つとして、強い気持ちで向き合ってあげてください。
    将来、きっと全てを受け入れてくれる沢山の友達やパートナーに出会うはずです。他の子と変わらない愛情を持って育ててあげてください。
    我が家の子供たちにも、私の鼻のことは全て話しています。見た目で判断してはいけないと言うことを理解して貰うために。

      
  • 匿名 says:

    そうなんです。できるできないじゃなく、家事や用事を効率的にこなすことができないことが母親にとってはストレスなんです!
    男性の育休取得は巷でも聞かれるようになりましたが、ただ家にいるだけの方もいるそうなので、こういった経験談が義務教育で教えるレベルになって欲しいですね。産後2ヶ月の5児の母より。

      

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