節分の福豆も危険!アーモンドがのどに詰まって10歳女児が死亡…「硬い豆」に注意しよう

(2018年1月23日付 東京新聞朝刊)
 食べ物をのどや気管支に詰まらせる「気道異物」の事故。子どもの命を奪うこともあるが、アーモンドや節分の福豆などの硬い豆類が原因となることはあまり知られていない。福豆やナッツ類は小さいかけらでも気管支に詰まる危険性があるため、2月の節分を前に、わが子を失った親や医師らが十分注意するよう訴えているほか、消費者庁も幼い子どもには与えないよう呼び掛けている。

アーモンドをのどに詰まらせて亡くなった桜井みのりちゃん(遺族提供)

母の訴え「みのりの事故を教訓にしてほしい」

 さいたま市の小学4年生桜井みのりちゃん=当時(10)=は約5年前、アーモンドをのどに詰まらせて亡くなった。事故は、当時中学生だった姉と一緒に自宅で留守番をしていた時に起きた。みのりちゃんは姉とゲームをしながら、1センチほどのアーモンドを口に入れた直後に、せきこんでけいれん。姉は救急車を呼んで背中をさすり続け、みのりちゃんは病院に運ばれたが脳死状態となり約3カ月後に亡くなった。アーモンドは水分を含んで膨らんでおり、気管にすっぽりはまっていた。

 母親の知佳子さん(50)は「もちや、こんにゃくゼリー、あめはのどに詰まりやすいと知っていたが、まさか一粒のアーモンドが娘の命を奪うとは思わなかった。みのりの事故を教訓にして、お子さんに硬い豆を食べさせる時には十分に気を付けてほしい」と話す。

医師の指摘「かけらが気管支に詰まることも」

 消費者庁の調べでは、食べ物が原因で14歳以下の子どもが窒息して死亡する事故は2010~14年の5年間で103件が起きている。原因となった食品の内訳はマシュマロやゼリー、団子などの菓子が11件と最多だが、72件は何を食べたのかは分かっていない。しかし、三重耳鼻咽喉科(津市)の坂井田麻祐子院長は「乾燥した豆類も、気道異物事故の原因で多い。豆はのどに詰まる窒息だけではなく、かけらが気管支に詰まる危険性もある」と話す。

 乾燥した豆は硬いため、特に歯が生えそろう前の小さな子どもは、うまくかみ砕くことができない。事故は子どもが豆を口の中に入れている時に転んだり、驚いて息を吸ったりした弾みで気管支に入り込むケースが多い。豆が気管支に詰まると呼吸が難しくなり、気管支炎や肺炎を起こすことも。取り除くには全身麻酔をして、のどから細長い器具を挿し込んでつかみ取る手術が必要となる。

詰まったらタイムリミットは「5分」…対処法は?

 異物がのどに詰まり窒息した場合は、5分以内に取り除かないと死亡してしまう危険性が高い。万一の時には、1歳未満の場合は頭を下にして背中を5回たたいた後に、あおむけにして胸の中央を5回押すことを繰り返す。1歳以上の場合は背後から両手を組んで腹部を圧迫して異物を出す。

 消費者庁によると10~16年に豆を気管支などに詰まらせ、病院を受診した3歳以下の子どもは少なくとも20人以上おり、半数は入院していた。同庁は、3歳ごろまでの子どもには福豆やナッツ類を与えないよう呼び掛けている。

絵本で学ぶ対処法 ミニトマトも半分に切る

気道異物事故予防をテーマにした絵本「つぶっこちゃん」を手に、豆が気管支に詰まる危険性を説明する三重耳鼻咽喉科の坂井田麻祐子院長=津市で

 坂井田院長は昨年11月、気道異物事故の予防をテーマとした絵本「つぶっこちゃん」を自費出版。豆の他にも、のどに詰まらせることが多いミニトマトを半分に切って食べることなどを絵本で提案している。緊急時の気道異物除去法や心肺蘇生法などもイラスト入りで掲載しており、「親子で食べ物による事故の怖さや予防法を学んでほしい」と話す。