早期教育は意味がない。習い事は三日坊主でOK。「小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て」
子育てとは、子どもの最高の代弁者となることです
小児科医は子どもの代弁者です。“代弁”とは、困難に立ち向かう子どもたちやおかあさんの思いをくみ取り、その思いを誰にでもわかる言葉に翻訳することです。
少子化、貧困家庭、虐待、いじめ。子どもにまつわる暗いニュースを聞かない日はありません。子育てのプレッシャーがおかあさんの肩にずしりとのしかかっています。WEBを検索すれば、どんな情報も数秒で手に入る便利さの半面、医学的根拠のない子育て情報に振り回されるリスクも高まっています。「あとで後悔したくない」「失敗したら自分のせい」とおかあさんは頭を抱えます。そんな思いに応えるため、専門家の立場から分かりやすく問題を解説し、解決策についてお話ししたいと思いました。不安とあせりが募るとき「心配いりませんよ。大丈夫」とそっと声をかけることも、ぼくら小児科医の大事な使命なのです。
この本でお伝えしたいことは、どんな子どもでも、大きな「自己肯定感」をもって生まれてきたということ。それを守り、大きく育ててほしいのです。もって生まれた才能を信じて花開くときを待ってほしいのです。これぞ育児の醍醐味(だいごみ)なのですから。
「早期教育には意味がない」「習い事は長続きしなくてもいい」「学業成績などの“成果物”に心を奪われてはいけない」など、お伝えしたいことは山ほどあります。些末(さまつ)なことにとらわれず、子どもをしっかり見て、感じて、共感する。子育てとは、おかあさんが子どもの最高の代弁者となることです。そして、子育ての到達目標は、子どもたちが「生まれてきてよかった」「自分は自分でいい」と感じられること。これこそが「自己肯定感」の賜物(たまもの)です。
この本は、まずは子育て中のひと、子育てしようとしているひとに向けて書きましたが、自身の子どもを育てることはなくても、社会の一員として子育てに参加したいと感じる心やさしいひとたちにも、ぜひ手に取ってもらいたいです。
たかはし・たかお
慶応義塾大医学部小児科教授。1957年東京都生まれ。小児科医として36年間、数万人の子ども、母親たちと出会った経験をベースに初の著書を出版。趣味はランニング。