「日本では親の7割が体罰」…禁止を法制化したスウェーデンに学ぶ

(2018年6月16日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 子どもへの体罰を法律で禁止しているスウェーデンに、暴力によらない子育てを学ぶシンポジウムが11日、東京都港区の同国大使館で開かれた。国連関係者や両国の専門家らが参加。日本では家庭内での体罰を明確に禁じる法律はなく、参加者から「子どもを守る法整備を」との声が上がった。

世界初、体罰禁止を法制化

 スウェーデンは1979年、世界で初めて子どもへの体罰禁止を法制化。政府主導で啓発キャンペーンや親への支援を展開した。法整備の動きは各国に広がり、現在53カ国が体罰を法律で禁止している。

 シンポでは、子どもへの暴力に関する国連事務総長特別代表のマルタ・サントス・パイスさんが「子どもに対する国の責任を示すものとして、明確な法制化が必要だ」と話した。

 スウェーデンの小児科医スティーブン・ルーカスさんは、法制化による同国の変化を紹介。60年代に体罰を用いた人の割合は九割以上だったが、現在は一割以下になったという。親による0~17歳の子の虐待死は年15人(70年)から4人(2010年)となり、「子どもにも人権があるという社会的認知が高まり、実際の暴力も減った」と説明した。

子どもへの暴力のない社会を実現するためパネル討論で話す(左から)瀬角さん、高祖さん、パイスさん、ルーカスさん=東京都港区で

民法は「子の利益のため」なら親権者の懲戒行為を許容

 日本の虐待防止の専門家を交えたパネル討論では、公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が昨年実施したインターネット調査の結果が報告された。全国の成人2万人対象の調査で、約6割が子どものしつけとして体罰を容認。子育て中の親1030人の約7割が実際に子どもをたたいていた。調査を担当した瀬角南さんは「体罰をしてはならないと明文化することが、社会の共通認識をつくるために必要。それにより啓発や支援も進む」と話す。

 子どもへの体罰を巡っては、目黒区で5歳女児が父親からしつけと称して暴行を受け、死亡した事件が記憶に新しい。日本では、学校での体罰は学校教育法で禁止されているが、家庭内は民法に懲戒権の規定があり、「子の利益のために」なされる「監護及び教育に必要な範囲内」に限り、親権者による懲戒行為が許容されている。この規定の解釈を巡って意見が分かれていることが、体罰禁止の明文化の議論を難しくしている。

国民共通認識に

 NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事の高祖常子(こうそときこ)さんは「虐待した親は『しつけのつもりだった』と言う。しつけに暴力や暴言は不要だということを国民共通の意識にしていきたい」と語った。

 シンポは、7月28日から東京富士美術館(八王子市)で開催される「長くつ下のピッピの世界展」を記念して開催。作者のアストリッド・リンドグレーンは子どもの権利保護に尽力し、「子どものしつけに暴力はいらない」と訴え続けた。シンポにはひ孫のヨハン・パルムベリさんも登壇した。

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