歴史ある「幼児教室」、評価高まる「森のようちえん」も幼保無償化の対象外に… 不公平ではないの?
多様な子どもを受け入れるための認可外
「お水がいっぱいたまっているよ」「冷たい!」
4月中旬、千葉県松戸市の「小金原保育の会幼児教室」の園庭で、子どもたちが水たまりや砂場で元気に遊んでいた。団地の一角にあるこの教室は1975年に保護者らが設立し、障害児や外国人を含む多様な児童を受け入れてきた。理想とする運営を続けるため、認可施設にならない道を選んだ。
千葉県に「認可外施設」として届け出ているため、無償化では共働き世帯などが上限付きの補助金を受けられる見通しだ。しかし、大半の利用者は共働きではなく、施設にも利用者にも恩恵はほとんどない。
「行政の不備を補ってきたのに不公平だ」
政府の目指す無償化は、幼稚園や保育所などの認可施設を利用していれば、専業主婦(主夫)の世帯を含め対象とする。認可外施設で対象を絞るのは、待機児童になり、やむなく認可外施設を利用する家庭への配慮だが、本来は一定の水準を満たした認可施設に預けるのが望ましい、との原則に立つためだ。
同教室の武中悦子事務局長は「幼稚園に断られた子や共働きが難しい家庭を支え、行政の不備を補ってきたのに不公平だ」と嘆く。
「園舎なし」独自性が評価されているのに…
東京都西東京市で62年から続く、自治会運営の「たんぽぽ幼児教室」も厳しい状況に置かれる。独自の運営を目指して認可外施設の届け出をしておらず、全利用者が無償化の対象外だ。都から補助金が出る方向となったが、隣県から通う世帯には適用されない。平賀千秋・幼児教室部長は「保護者から選ばれなくなれば、存続できない」と心配する。
自然体験を通じて子どもを育てる「森のようちえん」も同じ悩みを持つ。園舎なしや親の運営への参加など柔軟性・独自性が強みで、複数の自治体が独自の認証制度をつくるなど、評価が高まっている。しかし、園舎がないことなどを理由に「認可外施設としても認められない」としている自治体もある。今回の法案では、認可外施設でなければ無償化から外れる見込みで、園舎がないことなどを理由に、認可外施設の届け出そのものを行政機関から拒否される例もある。
「自治体が評価する施設は無償化にすべき」
約200団体が参加する「森のようちえん全国ネットワーク連盟」は昨年、全利用者の無償化を政府に要望したが、施設ごとに判断するとして、一律の無償化は見送られた。
国会審議でも、与野党が「一部の施設が無償化から漏れる」と問題視したが、これまで法案の修正には至らず、衆院通過の際、5年後をめどに扱いを検討するという付帯決議にとどまった。明星大の垣内国光(かきうちくにみつ)名誉教授(保育政策)は「自治体が評価する施設は対象にするなど、柔軟な運用をすべきではないか」と語った。