〈パリ特派員の子育て通信〉すてきなバカンス スイスで娘の成長を実感

竹田佳彦 (2019年9月3日付 東京新聞朝刊)

 2017年9月からフランスに駐在する東京新聞パリ支局の竹田佳彦記者(41)が、現地の子育てについてつづります。随時掲載。

スイス南部ツェルマットの山で、丸木の水槽に触れる娘

 昨年9月の幼稚園入園から1年が過ぎました。毎日フランス語に触れ、周りの会話がだいぶ分かるようになったようです。恥ずかしがり屋で、大人に話し掛けられると逃げてなかなか話してくれないのですが…。

 そんな娘が夏休み前、「とーたん、バカンス(夏季休暇)ある?」と聞いてきました。「バカンス」の響きに「すてきなもの」という雰囲気を感じたのか、周りでも休暇中の行き先が話題になっているのか。「自分の家はどうなんだろう」と気になったのでしょう。

 たしかに朝、幼稚園で顔を合わせる保護者や近所の人との話題も、ふたことめには「どこかに行く?」「日本に帰るの?」。実家や別荘に出掛けたり、友人の別荘に行ったりと過ごし方はさまざまのよう。涼しい仏北西部ブルターニュ地方で家を借りて長期滞在する人もいました。知らない土地の名前が出てきて、ちょっとした地理の勉強になりました。

 子どもたちの夏休みは2カ月近く、会社員でも3週間とることが珍しくありません。とはいえ、大人は子どもたちと同じだけ休みを取るわけにもいかないので、「サントル・ド・ロワジール」と呼ばれる学童保育を利用します。場所は、いつも通う幼稚園や、小さな園の場合は周辺の施設に通う子たちを1カ所に集めて保育します。

 わが家の場合はいつもと同じ園。普段の登園より30分ほど遅い午前9時までに連れて行くと、夕方まで面倒を見てくれます。幅広い年齢の子どもが一緒に過ごすため、普段同じ年ごろの子としか遊ばない娘も「おねえちゃんに遊んでもらったの」とうれしそう。

 チョコレート博物館に行って試食したり、近くのプールに出掛けたりと課外活動もあります。園内の掲示板には「プールに行く日は水着を持ってきてください」「外出する時は帽子とサングラス、水筒を持たせてください」と書かれた紙が張ってありました。利用料金は親の所得によりますが、わが家の場合は給食代込みで1日11・67ユーロ(約1400円)でした。

 夏休みが始まったころはにぎやかだったサントルですが、8月に近づくと徐々に減りはじめ、当初の半分の30人ほどになっていました。

 さて、わが家の夏休みは電車でスイスへ。涼を求めて、南部の街ツェルマットから高山鉄道で標高3000メートルまで上り、3時間ほどハイキング。娘は1度も抱っこされることなく歩ききりました。自信になったようで、帰宅後も「バカンス、お山に行ったね。抱っこされなかったね」とうれしそうに振り返っていました。新しい経験をすることで感じられる娘の成長。休暇の時は、極力普段できないことをさせてあげたいと感じたバカンスでした。

 9月から娘は幼稚園の年中へ。ほとんど言葉が分からない状態で入園して1年で友だちも増え、できることがどんどん増えている娘。去年のように、泣きながら登園をストライキすることはもうないと思うと、少し寂しくもありますが頼もしく思えます。