コロナで登園自粛 「認可外保育」も支援する動き 横浜市は施設に最大30万円、さいたま市は利用家庭に保育料補助
横浜市 保育料を返還した施設に
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため利用者に登園自粛を求めた認可外保育施設への財政支援を横浜市内の保育団体などが求めていた問題で、横浜市は、支援に否定的な方針を一転し、登園を自粛した利用者に保育料を返還した施設に最大30万円の支援金を支給する方針を明らかにした。
支給対象は最大で約380カ所と見込み、本年度第二次補正予算案に事業費1億1000万円を計上した。財源は国の臨時交付金を想定している。林文子市長は23日、市議会で「感染拡大防止は社会的な要請」などと述べた。
林市長、否定的な姿勢だったが…
認可施設は登園自粛要請などで利用者が減っても、横浜市の方針に基づいた対応なら人件費や家賃などが公費で支給される。これに対し認可外施設は公的な助成は児童の健康診断費用などに限られ、利用者からの保育料収入がなければ経営危機に直結する。
横浜市内の認可外施設などでつくる横浜保育室・無認可保育所連絡協議会は5月、財政支援を求める要望書を市に提出した。しかし、林市長は同月、市議会で「認可外施設は料金や保育内容を任意で設定しており、認可施設と同等の支援は困難」と答弁し、否定的な姿勢を示していた。
認可外施設からは「貴重な一歩」
今回、判断が変わったことについて、横浜市の担当課は「登園自粛要請は社会全体の取り組みで事業者だけの判断とは言えず、市として支援できる方法を考えた」と説明している。
財政支援を求めていた認可外施設の一つ「キッズナーサリーみなとみらい園」(神奈川区)の永井宏樹園長(38)は「支援金の額は実際の経営のマイナスには全く足りないが、これまで見捨てられてきた認可外施設の切実な声に対し、市が具体的な支援を決めたのは貴重な一歩」と受け止めた。 (杉戸祐子)
さいたま市 追加補助の対象は86施設
新型コロナウイルスの影響で認可外保育施設への登園を自粛した家庭に対する利用料補助について、さいたま市は24日、市が認定していない施設の利用者にも実施すると発表し、一般会計補正予算案に5097万円を計上した。さいたま市は当初、市の認定する施設の利用者にだけ補助を出すとしており、ほかの施設の保護者から「法の下の平等に反する」として再考を求められていた。
記者会見した清水勇人市長は「(認可外施設にも)保育の一部を担っていただいている。市が登園自粛要請をしたので補助を決定した」と説明、「今回限りの特別な措置」だと強調した。
さいたま市幼児政策課によると、今回追加する補助の対象は86の認可外保育施設。国の補助がある企業主導型保育施設は含まない。市が登園自粛を要請した4月8日~5月31日に実際に登園しなかった日数で保育料を割り、保護者に補填(ほてん)する。上限はゼロ~2歳は月額5万5000円、3~5歳は同5万円。国の幼児教育無償化分も含んだ金額で、実質的な市の負担は平均1万3000円程度という。
1日も登園させなかったのに3万2000円の負担
登園しなかった分の保育料補助を巡っては、認可保育所などには国と自治体で減免する仕組みがある。認可外施設にはなかったが、さいたま市は5月、市が認定する一部施設については休んだ日数分を補助すると発表。対象から漏れた施設の保護者らが、命を守る措置で区別するのはおかしいとし、同様の措置を求め市に署名を提出していた。
署名に参加したさいたま市内の母親(27)は今回の措置を「喜んだ仲間も多い」と評価。ただ、自身の4歳の長男が通う施設は月額6万6000円で、自粛期間中、1日も登園させなかったが、今回の補助を充てても計3万2000円の負担は残る。
さいたま市の待機児童数は4月現在387人で全国屈指の多さ。認可保育施設への競争が激しいため最初からあきらめて認可外を選ぶ人も少なくない。母親は、「これを機に、保育激戦区で認可外を切り捨てない対応をしてほしい」と注文をつけた。(前田朋子)
[元記事:東京新聞 TOKYO Web 神奈川 2020年6月25日]
[元記事:東京新聞 TOKYO Web 埼玉 2020年6月25日]