児童手当を削って待機児童対策に? 政府が高所得世帯への特例給付・月額5000円の廃止を検討 「少子化対策に逆行」と批判も
※政府・与党は12月10日、高所得世帯向けの給付を一部廃止することで合意。夫婦のうちどちらかが年収1200万円になれば支給を打ち切る方針となりました。
4人世帯なら年収960万円が目安
所得制限により児童手当を減額される特例給付を受給したのは2018年度に約100万人で、支給総額の約900億円のうち3分の2は国費。所得制限は夫婦共働きでも収入が多い方を基準にしており、配偶者と子ども2人が扶養に入る4人世帯なら年収960万円が目安となる。
支給の削減を検討する背景は、首相の思い入れが強い待機児童対策の財源不足だ。
内閣府は2024年度、新たに約14万人分の保育の受け皿が必要になると推計。関係者によると、待機児童の解消に千数百億円が必要と見込まれ、財源捻出の一環として児童手当の縮減案が浮上した。
与党からも異論「大問題になる」
子育て支援策の中で財源をやりくりする「パイの奪い合い」は、少子化対策を充実する方針にそぐわず、野党だけでなく与党からも異論が出ている。自民党の衛藤晟一前少子化対策担当相は、児童手当の金額を据え置いて特例給付の廃止に踏み切れば「政府の姿勢を問われる大問題になる」と記者団に指摘。国民民主党の玉木雄一郎代表はツイッターで「子ども向け予算をけちってはならない」と強調した。
政府は12月の2021年度予算編成までに結論を出す方針。影響を受ける世帯が多いことから、所得制限の基準額の引き上げや、多子世帯への児童手当増額も合わせて検討するが、待機児童対策の財源確保は「非常に厳しい」(坂本哲志少子化対策担当相)としている。
中央大の山田昌弘教授(家族社会学)の話
高所得世帯向けの特例が廃止されれば、若者世代がもらえたはずの手当がなくなるんだと萎縮し、第2子、第3子はやめておこうとなる。少子化対策には完全に逆行する。予算を削るのではなく、全体を底上げすべきだ。
児童手当とは
中学校卒業までの子どもを養育する人に国などが支給する。1人あたりの月額は3歳未満が1万5000円、3歳から小学生が1万円(第三子以降は1万5000円)中学生は1万円。所得制限があり、養育する人(夫婦共働きの場合は収入が多い方)が限度以上の場合は「特例給付」として月額5000円を支給。所得制限は扶養親族の数によって異なるが、扶養親族が2人なら収入917万円、3人なら960万円が目安。
[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年11月14日]
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