子どもが入園、新年度の不安を乗り越えるには 親が余裕を持つ大切さと「3つのセルフケア」

長田真由美 (2022年4月9日付 東京新聞朝刊)
 新年度が始まった。ずっと一緒にいたわが子の保育園や幼稚園での新しい生活が始まり、不安な親は少なくないだろう。加えて、新型コロナウイルス禍はいまだに収束が見通せず、感染への心配も尽きない。こうしたストレスをどう乗り切るか。関東の保育園で働きながら、子どもへの向き合い方をツイッターやYouTubeで発信し「カリスマ保育士」として知られる、てぃ先生(35)に聞いた。

てぃ先生(本人提供)

保育士はプロです まず親が安心して

 てぃ先生は「子どもをプロに任せるのだと、まずは親が安心してほしい」と力を込める。例えば、保育士は、保護者の代わりに子どもを世話する知識や技術を持つ専門家だ。

 とはいえ、ゼロ歳から入れる保育園の場合、「まだ小さいのにかわいそう」といった周囲の声に罪悪感を抱いてしまう場合も。働く女性が増える中、「そういう人と価値観を合わせるのは無理」ときっぱり。「幼いころから同世代と触れ合うことは社会性を育む」と、自信を持つよう促す。心ない言葉をかけられたら「右から左へ受け流して」と勧める。いちいちダメージを受けないことが大切だ。

イライラしないよう「時間」をつくる

 親と同じように、子どもも環境の変化にはネガティブな感情を抱きがち。これまで一緒だった親や祖父母、ベビーシッターなど信頼関係が築けている人と離れることは寂しい。既に保育園や幼稚園に通っている子でも、クラスや先生が替わるのはストレスになる。

 そうした心の負担を受けとめ、きめ細かくケアするには、普段から親が余裕を持つことが必要だ。「人がイライラするのは、時間がない時。人間の余裕は『時間』に尽きる」。あと5分で電車に乗るのに「靴をはきたくない」とぐずられると、いら立ってしまう。同じ言葉でも時間があれば受けとめられる。「どうやって時間をつくればいいかを考えてほしい」と言う。

ルーティンをサボり、妥協するのが鍵

 工夫の余地はいろいろある。食事を3食手作りしているなら、週に3日は総菜やレトルト、出前を使う、毎日の掃除を2日に一度にする、金銭的に困っていなければ掃除ロボットや家事代行を頼む…。「暮らしのルーティン作業をどれだけサボったり妥協したりできるかが鍵」と助言する。

 「子どもの幸せのためには、ママ、パパの幸せが一番大切」とてぃ先生。親自身が幸せを感じる方法、余裕を見いだすことが、不安の解消に役立ちそうだ。

コロナ禍の3つのセルフケア 成育医療センターのサイトで紹介

 先が見えないコロナ禍は親のストレスを増幅させる要因だ。国立成育医療研究センター(東京)のこころの診療部は新型コロナの感染拡大直後から、セルフケアの方法を提案。ポイントは、「自分の今の気持ちを表現する」「ストレス対処法を見つける」「できる範囲で他の人とのつながりを維持する」の3つだ。

 気持ちを表現する方法の一つは「寂しい」「イライラする」などと書き出すこと。音楽を聴く、おしゃべりをする、ストレッチをする、ゆっくり風呂に入る、大好きなスイーツを食べるなど対処法は人それぞれだが、複数持っていると安心だ。人と直接会って長く話す機会は減っても、LINEやメール、手紙、電話などを使えばつながることはできる。

 ひどく疲れた状態が2、3週間以上続く、大切な人や自身の心や体を傷つけるといったことがあれば、地域の保健センターや精神保健の窓口、子育て支援センター、児童相談所、病院などに相談した方がいい。詳しいストレス対処法は、国立成育医療研究センター こころの診療部のサイトで「セルフケア編」として紹介している。