「昨日まで食べられなかったものが…!」のため日々工夫 「保育園給食の人気レシピ」担当の管理栄養士・中村えみ子さん

 「どうしたら子どもが好き嫌いをせず、ごはんを食べるようになるのか」という小さい子を育てる親御さんからの声を受け、4月からスタートした連載「子どもが喜ぶ! 保育園給食の人気レシピ」。レシピとアドバイスを担当する管理栄養士・中村えみ子さんに、毎日の給食を作るうえで大切にしていることを聞きました。

管理栄養士の中村えみ子さん=木口慎子撮影(撮影のためマスクを外しています)

小麦粉と卵の「誤食リスク」防ぐには

 ―毎日の給食を作るうえで、大切にしていることはありますか?

  園では、小麦粉と卵を使っていません。アレルギーに配慮した給食に力を入れるのは、みんなで同じものを食べれば、子どももうれしいし、保育士や栄養士、調理師の負担も減るし、食べ間違いのリスクも減らせるからです。

 可能な限り誤食を防ぎたいという思いは強いです。卵や小麦粉があった方がおいしいものを作ることができるかもしれませんが、なしでもおいしいものが提供できるよう、同僚と一緒に相談と試行錯誤を繰り返しています。アレルギー対応のために、何種類も作ることに時間をかけるよりも、全員分をより丁寧に作ることに時間をかけたいと思っています。

 子どもたちが給食を食べるその時間のために準備をし、おいしく食べられるような工夫を日々考えて実践しています。昨日まで食べられなかったものが、今日、何かをきっかけに、ほんの少しでも食べられるようになったらいいな。そう思いながら、調理室に立っています。

「食べること」で人を元気にしたくて

 ―なぜ、栄養士になったのですか?

 薬ではなく食べ物の力で、自分の近くにいる人が元気になったらいいなと思ったからです。親戚に看護師が多かったので、「人のために何かする仕事を」とは考えていたのですが、看護ではなく、食べる方がいいなと栄養士の資格を取りました。

 初めに就職したのは、埼玉県にある大学病院です。食事制限のある患者さんもいるので、きっちり分量を量ることが必要で、間違いも許されない。基本中の基本をちゃんと身につけるため、一番大変な現場を若いうちに経験しようと考えました。スタッフ総勢20人ほどで、600~800人の患者さんの食事を作っていました。ベテランの栄養士さんや調理師さんの仕事ぶりを間近で見ることができ、勉強になりました。

 特に調理師さんには、作るうえでの細かい配慮や気配りを教わりました。色鮮やかに、きれいに繊細に料理を作る姿を見て感動する日々でした。

主婦を経て「子どもの役に立つことを」

 ―保育園の栄養士になったのはなぜですか?

 結婚後は10年間、専業主婦をしていました。娘2人が生まれ、しばらくは子育てに専念しました。栄養士の腕を家庭で発揮したかというと、子どもと遊ぶのに一生懸命になり、手の込んだ料理を作る余裕はなかったというのが正直なところです。

 上の娘が小学生の時、「給食のスタッフが足りない」と声が掛かり、「手伝うよ!」と調理スタッフに入ったのが仕事復帰のきっかけです。他の小学校も手伝ったり、大学病院の調乳室に勤めたりを経て、保育園の栄養士として働くことになりました。この園には2018年4月の開園時から勤めています。

 子どもたちのために働く仕事を選んだのは、父の影響です。父は孫である私の娘たちのためも含め、毎朝小学校の通学路の交通整理をしてくれていました。その姿が強く記憶に残っていて、父が亡くなった後、「私も何か子どもたちの役に立てることをしたい」と保育園の栄養士の仕事を始め、今に至ります。

管理栄養士・中村えみ子さん

 1969年生まれ。川崎市にある「みんなのほいくえん at むさしこすぎ」の管理栄養士。大学病院などで栄養士として勤務後、子育てを経て、保育園の管理栄養士として復職。素材のよさを最大限に生かしたいと、同僚栄養士が驚くほど丁寧な下ごしらえを心がけている。