〈保育園給食の人気レシピ〉あじのりんごソースがけ 子どもがお魚を好きになる2つのポイント

 お魚が苦手なお子さん、いませんか? 今月は、そんなご家庭にぴったりのレシピ「あじのりんごソースがけ」を紹介します。子どもたちがお魚の何を苦手と感じているか、管理栄養士の中村えみ子さんのアドバイスに、目からウロコが落ちる思いです(魚だけに)。ソースを絡め、一口で食べる量に気をつければ、子どもたちがお魚料理と仲良くなる日は近い気がします。卵・乳・小麦アレルギーのお子さんも食べられるメニューです。
※紹介するのは、保育園で<1~2歳の子ども10人分>として作っている分量です。目安としては、<大人2人+よく食べる小学生くらいの子ども2人>が満足できるくらいの量です。家庭でも作りやすい分量ですが、ご家族の人数や食欲に合わせて、半量や1.5倍量にして作ってみてください。

材料(子ども10人分)

  • あじ 30g×10切れ
  • しょうが 1g(小さじ1/3)
  • 酒 7g(大さじ1/2)
  • 片栗粉 20g(大さじ2強)
  • サラダ油 20g(大さじ1と1/2)
  • りんご 120g(小1個)
  • 酢 14g(大さじ1)
  • 砂糖 8g(大さじ1弱)
  • しょうゆ 10g(大さじ1/2強)

※かっこ内はだいたいの目安です。

作り方

1.  オーブンを使用するときは200~220℃に予熱し、シートをしいておく。

2. あじにしょうが、酒で下味をつける。

3. ビニール袋に片栗粉を入れ、(2)で下味をつけたあじを加えて空気を入れ、口を閉じて優しく振る。

4. 鉄板に(3)で片栗粉をまぶしたあじを並べ、サラダ油を回しかけて表面にまとわせる(全体が均一に焼けるように、魚全体にまんべんなく塗る)。

5. 予熱の完了した200~220℃のオーブンで、(4)で油を塗ったあじを10分焼く。

6. 小鍋を火にかけ酢を入れ酸味を飛ばし、砂糖を入れて溶かす。

7. (6)の鍋にすりおろしたりんご、しょうゆを加え、ひと煮立ちしたら火を弱めて2~3分煮る(りんごのさわやかな甘酸っぱさを残すときは短めに、まろやかにしたいときは長めに煮る)。

8. お皿に(5)で焼いたあじをのせ、(7)のソースをかけて完成。

子どもが食べやすいポイント

のみ込みやすくなる「ソース」と「ひと口量」

 パサつきがちな焼き魚は、小さなお子さんにはのみ込みにくい食材です。今回は、甘酸っぱいソースをかけることで、食べやすく、のみ込みやすくしました。動画では身をほぐしませんでしたが、園では皮を外して身をほぐしてから、りんごソースを絡めたり、のせたりしています。こうすると、よりしっとりして食べやすくなります。

 また、<ひと口で食べる量=スプーンにのせる量>にも注意が必要です。おいしい味付けになっていると、魚だけをいつもより大きなひと口で食べてしまいやすく、かんでいるうちに水分がなくなり、のみ込めずにいつまでも口の中にとどまってしまうことがあります。魚や肉はかみにくいので、ごはんだけをスプーンにのせるときよりもひと口量を少なくして、口に入れたときに、かむためのスペースが広く取れるように気を付けています。口の中で魚や肉を左右に転がしながら、丁寧にもぐもぐしてほしいからです。

 魚や肉だけを口に入れると、時間がたつにつれ、口の中で水分がなくなり、ごっくんとのみ込みにくくなります。今回のような焼き魚は、ごはんと一緒に口の中に入れると、ごはんと絡まるのでのみ込みやすくなります。少しの魚や肉でものみ込みにくそうなときは、ごはんと一緒に口に入れるとよいでしょう。

 おいしい味付けだと、ごっくんができていなくてもすぐ次々と口に入れたくなり、口の中にどんどんため込んでしまうことがよくあります。ごはんと一緒に程よい分量でかめるようになるといいですね。

味噌汁やお茶で流し込むのは、よくない

 魚や肉に限らず、口にごはんをため込んでいるときに、お味噌汁やお茶をさらに口の中に追加して流し込むと、かまずに水分で飲み込むことが習慣になってしまいます。丁寧に少しずつのみ込む力をつけるために、魚やごはんが確実にのみ込めたことを確認してから、お味噌汁などの水分をとってくださいね。

 そばで見守る大人が「ちゃんとのみ込めたかな?」と様子を見てあげると、子どもたちはスムーズに食べ進めることができます。小さい時からの習慣づけで、上手にかんでのみ込めるようになっていきます。一番よいのは、子どもの目の前で、大人がよくかむ姿を見せてあげることです。子どもはよく見ていますし、上手にまねしようとしますから。何より、大人がおいしそうに食べる姿は、近くにいる子どもをとても幸せな気分にさせると思います。

小骨が気になるなら 身の中央を切り取る

 骨があるせいで、魚を苦手だと感じる子も少なくありません。「園では魚の骨抜きはどうしていますか? そもそも、子どもに魚を出すときは骨は抜いてあげた方がいいのですか?」という質問を受けました。実は園では、骨抜き済みの魚を業者さんから購入しています。でも、家庭で作る場合は、まずお店で三枚におろしてもらうのがおすすめです。身の中央に残った小骨は、家でその部分だけ直線状に切り取ってしまいましょう。

 保育園でも、小イワシの唐揚げを出したときに、骨をかんで気持ちがくじけてしまったお子さんが実際にいました。様子を見ながら、ある程度大きくなった子には「骨に気を付けて食べてごらん」と自分で挑戦させていくとよいと思います。

アレンジのヒント

 今回紹介したりんごソースは、蒸し鶏や蒸し野菜にドレッシングのようにかけてもOK。ドレッシングと違って油を使わないため、カロリーを抑えたい方にもおすすめです。サワラなど淡白な魚にも合いますし、脂分が多いサバなどは、さっぱりとおいしく食べられます。カロリーを気にしない場合は、魚を揚げてもいいですね。

 ソースで使う果物は、梨など、甘味があって、すりおろすことができるフルーツに代えてもよいでしょう。玉ねぎも、すりおろして長めに炒めると甘味が増しておいしいです。りんごと玉ねぎを一緒にすりおろして煮ることもあります。

 りんごはすりおろすと変色しますが、しょうゆを加えるので気にせずOKです。気になる場合は、りんごをカットした後に塩水につけ、さらに、おろし器にレモン果汁を数滴たらしてからすりおろすと、変色を抑えられます。

 しょうゆを合わせず、このすりおろしりんごとレモン果汁だけでも、色合いが優しく爽やかな味わいです。園ではフルーツ以外のすべての食材に火を入れますが、家ですぐ食べる場合は、火を通さずにそのままソースとしてかけてもよいですね。

管理栄養士・中村えみ子さん

 1969年生まれ。川崎市にある「みんなのほいくえん at むさしこすぎ」の管理栄養士。大学病院などで栄養士として勤務後、子育てを経て、保育園の管理栄養士として復職。素材のよさを最大限に生かしたいと、同僚栄養士が驚くほど丁寧な下ごしらえを心がけている。アレルギーに配慮した給食に力を入れるのは、「みんなで同じものを食べれば、子どももうれしいし、保育士・調理師・栄養士の負担も減るし、食べ間違いのリスクも減らせるから」。