長野市の”公園閉鎖”問題 1軒の苦情から…「事実上の園庭、尋常ではない音」 「寛容になれないものか」 見つからなかった着地点
学童や保育園のグラウンド代わりだった
以前は元気な遊び声が聞こえたであろう園内に人影はない。入り口のフェンスには、「3月31日をもって廃止します」の張り紙があった。長野市青木島町大塚の住宅地にある「青木島遊園地」。2004年、市が地元住民の要望を受けて開設し、隣接する学童施設や保育園などが、グラウンドの代わりに子どもを遊ばせてきた。
隣接する家に住む男性が、騒音被害を訴えてボール遊びの禁止などを求めたため、市は出入り口や遊具を男性宅から離れた場所に移設。子どもが男性宅に近寄らないための植栽を増やし、大きい音を立てないよう注意を呼びかける看板を設置するなど約100万円かけて対策を講じてきた。
「1世帯の苦情で…」全国から批判殺到
昨年3月には学童保育施設の職員が児童を引率していると、男性が「5人以下で遊ばせてほしい」と抗議。以来、施設は公園利用を自粛している。
これに合わせて学童施設の職員や保護者による公園の清掃も中止に。代わりに作業を担う有志が現れず、今年1月に地元区長会が市に閉鎖を求めたため、「総合的に見て、廃止はやむを得ない」(市の担当者)との結論に至った。
こうした経緯を市議の1人が12月にツイッターで紹介すると「1世帯の苦情で子どもたちの遊び場がなくなった」という構図に、市には全国から意見が殺到。12日までに600件を超えた。多くは廃止に反対意見だった。
「公園をなくせとは一度も言ってない」
一方、抗議した男性は「公園をなくせとは一度も言っていない。常識の範囲で、親子が公園で遊ぶ分には文句は言わない。ただ、学童施設の事実上の園庭のように利用されていて、尋常ではない音がした」と主張。妻は目を腫らしながら「18年間、家の前で毎日のようにたくさんの子どもが遊ぶ声がしたら耐えられますか」と問いかける。市には、「自分も近くに公園があって同じように困っている」との声も寄せられたという。
学童施設の関係者は「うるさいという感覚は人それぞれだが、寛容になれないものか」と疑問を口にする。双方の着地点が見つからないまま、長く地元の子どもたちに親しまれた遊び場は来春、姿を消す。
青木島遊園地
2004年に長野市が設置。広さ1376平方メートル。都市公園法に基づく公園とは異なり、市が独自に設ける公園に準じた広場で、閉鎖する場合の手続きが煩雑な公園に対し、法律などの縛りを受けない。同様の「遊園地」は長野市内に521カ所ある。
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