幼児教育・保育無償化よりも待機児童対策や「質」確保を 自治体の8割が「反対」

大野暢子、安藤美由紀 (2018年11月30日付 東京新聞朝刊)
 2019年10月の消費税増税に合わせて予定される幼児教育・保育の無償化で、自治体にも財政負担を求めた政府案に、全国の政令市と南関東の主要市区のうち「反対」と他の施策優先を求める声が計約8割を占めることが29日、保護者らのグループ「保育園を考える親の会」(東京都豊島区)が公表した自治体アンケート結果で分かった。 

「国の判断なのに自治体に大きな負担」

 幼保無償化を巡っては、政府が実施を決定した際に、保護者らから「お金があるなら、待機児童対策の解消や保育の質向上を優先してほしい」との声が噴出。自治体も同様の考えが強いことが鮮明になった。

 アンケートは東京都、神奈川、千葉、埼玉各県の主な市区に全国の政令市を加えた計100自治体を対象に実施し、75市区から回答を得た。

 自治体に負担を求める無償化に「反対」または「無償化より優先してほしい施策がある」と答えたのは約81%の61で、賛成は2。複数回答で保育行政への影響を聞いたところ「財政を圧迫し、待機児童対策に悪影響」が32と最多で「保育の質確保に悪影響」が続いた。自由記述欄には「国の判断なのに、自治体に大きな負担が生じるなら理不尽だ」などの意見が並んだ。

 利用料を除く保育施設の運営費は現在、公立の認可保育所で市区町村が全額、私立の認可保育所では国が2分の1、都道府県と市区町村が4分の1ずつを負担。政府は無償化に伴い、当初の半年間は必要な経費を全額国費で負担し、20年4月からは自治体の税収増を見越して、無償化分にも現行の負担割合を適用する考え。自治体にとっては新たな支出となり、財政負担が増す可能性がある。

 

全国知事会も「国が負担すべき」

 全国知事会(会長・上田清司埼玉県知事)は29日、幼児教育・保育無償化の財源問題を話し合う会合を東京都内で開き、地方の負担増にならないよう政府に求める方針を確認した。

 9人の知事がネットを通じて参加。無償化は国が地方と協議することなく決めた政策だとして、国が負担すべきだとの認識で一致した。ただ、実施が既定路線になっているため、上田会長は「ぶち壊すのは難しい」と指摘。「実質的に地方の負担が増えない仕組みができるよう努力したい」と、国との協議に臨んでいく考えを示した。