いじめ訴えた息子の名誉守りたい 自殺した都立高校生の母が都を提訴
蜘手美鶴 (2018年9月21日付 東京新聞朝刊)
東京都立小山台高校1年の男子生徒=当時(16)=が2015年に自殺したことを巡り、生徒が悩みを訴えていたにもかかわらず学校側が対策を怠ったことが自殺につながったなどとして、母親が20日、都に約9300万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。
母親も都担当者から怒鳴られ「精神的苦痛」
訴状などによると、生徒は高校入学後、同級生から嫌がる呼び名の連呼や無視などのいじめを受けた。15年9月、JR中央線大月駅(山梨県大月市)のホームから飛び込み、電車にはねられて死亡した。
生前、学校のアンケートに「悩みがあるので相談したい」と回答し、早退や保健室通いを繰り返していた。しかし学校側は、本人にどんな悩みがあるのか尋ねるなどの対策を取らず、そのことが自殺を招いたと主張している。また、自殺後に都教委に調査を十分に行うよう求めると、担当者から「ほかの生徒や保護者から苦情がきている」などと怒鳴られ、精神的苦痛を受けたとも訴えている。
都教委は17年9月、「いじめを認定するのは極めて困難」とする調査結果を公表。遺族は再調査を求め、都の知事部局の検証チームが今年7月、都教委の調査は不十分だったとして、いじめ防止対策推進法などに基づき再調査することを決めた。
「科学者になりたい」と言っていた息子
再調査の結果が出る前に踏み切った提訴。東京・霞が関の司法記者クラブで会見した母親は「優しくて思いやりのある子でした。『科学者になって人の役に立ちたい』といつも言っていた」と涙声で語り「学校や都教委からは説明も謝罪も一切ない。裁判で息子の人権と名誉を回復したい」と声を振り絞った。都教育庁は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。