歌手・俳優 當間ローズさん いじめられた僕のため、片言でも勇気を出して訴えた母
5歳で移住 日本語が話せなくて
父は日本人とイタリア系ブラジル人のハーフ、母はブラジル人です。僕が日本で暮らし始めたのは5歳ごろ。その1年前から仕事で来ていた父を追い、母と一緒にブラジルから静岡県湖西市に移り住みました。家は団地で、最初はテレビもありませんでした。父は意志が強くて謙虚で、家族思い。それまで、自動車部品の工場で働いて得たお金のほとんどを母と僕の元に送ってくれていたんです。
僕は当初、日本語が話せず、小学校でいじめられました。3年生ごろのある日、いじめでできた手足のあざを母に見つけられました。親も慣れない土地でストレスを抱えているだろうから、心配をかけたくないと思い、「転んだ」とごまかしましたが、すぐにうそだとばれました。
母は学校に行き、片言の日本語でジェスチャーを交えながら、いじめをなくしてほしいと先生に訴えました。息子を第一に考えてくれる母の存在は心強かった。その後、いじめは減りました。大事なことは勇気を持って言わなければならないということを母に教えられました。
テレビの世界に憧れ 勉強も両立
日本語のほとんどはテレビで覚えました。テレビに出ている人たちにも憧れ、「自分もテレビに出て認められたい」と思うようになりました。高校1年の時からアルバイトをしてお金をため、夜行バスで週1回、東京のタレント養成所に通い始めました。
でも、母には「堅実に勉強を頑張りなさい」と猛反対されました。「大学に入ることが芸能活動を続ける条件」と言われたので、僕は勉強にも励み、一般入試で専修大経済学部に入りました。一人暮らしで大学に通いながら、モデルや俳優として活動し、バーテンダーなどの仕事もして生活費を賄っていました。
日本で弟2人と妹もでき、ブラジルには帰りにくくなりました。家族がよって立つ場所が必要だと思い、20歳の時、父と頭金を出し合って湖西市に家を建てました。今、僕がテレビに出ると、家族はとても喜んでくれます。母はうれし涙も流しているとか。家族の喜びは僕の支え、原動力であり、努力し続けるための糧です。
いつか故郷のブラジルでライブを
子どもの頃、母はよく「大きなお城も小さな石の積み重ねでそびえ立つように、成功も毎日の小さな努力の積み重ねで成り立つ」と言っていました。その意味が大人になってやっと理解できるようになりました。
この夏には初のミニアルバムが世界配信される予定です。夢はブラジルでライブを開くこと。その時は、まだブラジルに一度も行ったことがない弟と妹も含め、家族全員を連れて行きたいですね。
當間ローズ(とうま・ローズ)
1993年、ブラジル生まれ。17歳からモデルとして活動。2020年、動画配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」の番組「バチェロレッテ・ジャパン」内で作詞作曲した「I fell in love」などで話題に。ドラマやバラエティー番組、舞台など活躍の幅を広げている。
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