夏休み明け…ずれてしまった子どもの生活リズム、どう取り戻す?

(2018年8月24日付 東京新聞朝刊)
 多くの学校などで、夏休みもあと1週間。つい夜更かしをして、起きる時間が後ろにずれてしまっている子どもも多いだろう。親としては、休み明けに体調を崩さずにしゃきっと登校できるか心配になってくるころだ。生活リズムを取り戻し、気持ち良く新学期をスタートさせたい。

「際限なくだらしなくなっていく」 

 千葉県内の会社員の男性(37)は、夏休みに入ってから夜更かししがちになった長男(5つ)を心配する。夜遅くまで録画したテレビを見たり、おもちゃで遊んだり。午後10時ごろまで起きていても「休みだからいいか」と許してしまっていた。午前6時から六時半だった起床時間が、最近は午前8時ごろになることも。どうやってリズムを戻そうかと考えている。

 ベネッセ教育総合研究所が2009年に小学生の母親4644人を対象に実施した調査によると、夏休み中に子どもが規則正しい生活が送れなかったと感じる保護者は、学年ごとに集計すると1~3割。高学年になるほど高かった。母親からは「夏休みだからと気が緩んでしまい、親子でのんびりしすぎた」「声を掛けないと際限なくだらしなくなっていく」といった声が上がった。その後の調査はないが、同研究所の邵勤風(しょうきんふう)初等中等教育研究室長は「テレビやパソコン、本などとの接触時間が長い子どもは睡眠時間が短い傾向にあるが、近年はスマートフォンの普及で、就寝時間が遅くなっている可能性がある」と推測する。

無理に寝かせるより「早く起こす」

 「夜遅くまで起きている癖がついた子どもを、無理に寝かせることはとても難しい。朝早く起こすことから始めましょう」。文教大教育学部教授で小児科医の成田奈緒子さん(55)は、こうアドバイスする。早く起きて夜は早めに寝かせ、翌朝に再び決まった時刻に起こすのを繰り返せば、自然とリズムが整うという。

 とはいえ、子どもを無理に起こすのも一苦労。無理なく起こすために成田さんが勧める方法は、子どもがワクワクするイベントを朝一番にこしらえることだ。

好きなテレビ番組を録画→翌朝に見る

 例えば、今の時季なら水遊び。多くの子どもが大好きで眠気も吹き飛ぶ。「今日は朝からパンケーキをいっぱい焼こうか」などと声を掛け、関心を引くのもいい。ゲームが好きなら、朝早くに遊ぶ時間を設定しよう。

 好きなテレビ番組が夜にあるなら、録画して翌朝に見るようにすれば、起きるのが楽しみになり、夜更かし防止にもつながる。

大事な脳内物質セロトニンは朝5~7時に

 早起きは、ただ幼稚園や学校の生活に合わせるというだけでなく「子どもの脳の成長に欠かせない」と、成田さんは説く。脳内物質の「セロトニン」は、睡眠や食欲、自律神経など生きていく上で基本となる機能をコントロールし、不安を抑えて心を穏やかにする働きがあるが、これは午前5時~7時ごろに盛んに分泌され、太陽の光が目に入ることでさらに増える。セロトニンの不足は、心の病気や障害につながるという研究もあり、早起きして朝日を浴びるというごく当たり前な生活こそが、子どもの成長には重要という。

 「最初は多少の根性がいりますが、いったん『朝起き脳』が作られれば『夜寝つく脳』は勝手についてきます」と成田さんは話す。