からかわれても平気。9歳の僕が髪を伸ばす理由 「ヘアドネーション」を知ってほしい
病気の人のために医療用かつらを
杉並区の民家を訪ねると、髪が胸まである小学生が出迎えてくれた。
2年前からヘアドネーションに取り組む本村くんだ。女の子に間違えられても髪を伸ばしているのは、「病気の人のかつらをつくってもらうため」と屈託ない笑顔で話す。
ヘアドネーションは、がんや無毛症などで髪を失った人に医療用かつらを届ける運動で1990年代に米国で始まった。日本では2008年から「Japan Hair Donation&Charity(ジャーダック)」(大阪市)が18歳未満の患者を対象に取り組んでいる。
2年伸ばした あと1年で31cm
本村くんは1年生の1学期に、同団体に髪を寄付する男子小学生を取り上げたテレビの情報番組で知り、伸ばし始めた。31センチ以上の長さがあれば、全国に3851店(8月末現在)ある協賛の美容院でカットして寄付できる。同団体によると、男性からの寄付は全体の10%ほど。小学生となるとその中の数%という。
元美容師の母親の由美さん(41)は「(寄付できる長さになるまで)少なくともあと1年はかかるかな。習い事の仲間から『なんで女みたいな頭してるの』と言われたことがあったようだが、本人は全く気にしていない」と見守る。本村くんは「髪が長いことでからかわれたことはない」ときっぱり。
缶バッジで啓発 本紙にも連絡
熱意が高じて、夏休みの自由研究にも選び、7月に同団体が都内で開いた親子講座に参加。そこで、からかわれて嫌な気持ちになってしまう男の子がいることを知った。ヘアドネーションを経験した男子中学生たちから「中学校の校則で髪を伸ばしちゃだめと言われた」「先生から男なのに変だと言われた」と聞いた。会場では「缶バッジで活動を伝えたら、男の子もできるようになるのでは」と考えた都内の女子中学生が、ヘアドネーション中と示す缶バッジを配布していた。
本村くんはその効果も調べた。自宅近くの駅前などでアンケートしたところ、102人に聞いて、バッジを知っている人はゼロ。模造紙2枚に自由研究をまとめた後も「バッジをたくさんの人に知ってもらいたい」と本紙に連絡してきた。
ジャーダックの広報の今西由利子さんは「子どもたちが自発的に社会課題に目を向けている。ヘアドネーションの考え方が広がることで、提供者が髪を伸ばしやすい環境を整えるだけでなく、髪などの『見た目』に悩む人が近くにいると気付くきっかけになれば」と期待する。
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