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髪がなくてもママはママ 親のがん伝える絵本 患者団体が出版 

神谷円香 (2019年1月29日付 東京新聞夕刊)
 子どもを持つがん患者の団体が、子どもの視点から病気について描いた絵本「ママのバレッタ」を出版した。「がんはつらく悲しいばかりではない。前向きに生きよう」-。メンバーたちの実体験に基づいた優しいメッセージにあふれている。
写真

絵本「ママのバレッタ」

髪留め使えない シャンプーはらくちん

 主人公は、抗がん剤治療で髪が抜けた母親を気遣う小学生の女の子。「ママは、長くてサラサラのかみの毛がじまんだったのに。バレッタ(髪留め)もつかえなくなって、とってもかなしそうだった」。タイトルにもなったせりふだが、悲しいだけの物語ではない。「かみの毛なんてなくても、ママはママ。ママには、生きていてほしい」「おふろのとき、シャンプーラクチン」「ぬけ毛がないから、ゴミが少ない」。女の子は時にユーモアを交えて母親を励ます。

 絵本を制作したのは、子育て世代のがん患者の交流サイトを運営する一般社団法人「キャンサーペアレンツ」(東京)。絵本のプロジェクトにはメンバー14人が参加した。2017年初めごろに「子どもに絵本を作りたいね」という話が持ち上がり、内分泌系がん患者で都内在住の会社員前田美智子さん(37)をリーダーに試行錯誤を始めた。

ドラマチックでない日常を描きたい

 「なるべくリアルに、ドラマチックでない日常を描きたい」。どんな話にしよう、絵はどう描こう…。無料通信アプリLINE(ライン)でやりとりを重ね、運良く得られた企業の助成金で作った見本本を手に「広めるなら商業出版を」と出版社を回ったが、断られ続けた。諦めかけた時に医療関係の本を扱う生活の医療社(文京区)が引き受けてくれ、昨年11月に3000部を発行した。前田さんは「うれしい。わが子のよう」と喜ぶ。

 絵と文は京都市の主婦田中聡子さん(49)が担当した。娘が4歳だった09年にステージ4の大腸がんと診断されたものの、手術と抗がん剤で症状が落ち着いた。絵が趣味で絵画教室に通っているが、絵本作りは今回が初めて。不安もあったが、色鉛筆と水彩絵の具を使った温かいタッチの絵に仕上げた。文は、メンバーの意見を集約して練り上げた。

亡くなった制作仲間も…「いろんな人の思いが詰まった本」

 今月19日、「出版感謝の集い」が都内で開かれ、関係者ら約100人が集まった。メンバーの一人で看護師小田村美歌さん(50)の長女英里さん(17)が絵本を朗読した。美歌さんの乳がんが分かったのは3年前。当時反抗期だった英里さんは「自分は自分のことで精いっぱいだったけど、絵本は、前向きに考えを変えれば良いこともあると教えてくれる」と話す。

 制作に携わった14人のうち5人が、この日を待たずに亡くなった。キャンサーペアレンツ代表の西口洋平さん(39)は泣きそうになるのをこらえて語った。「最後に絵本に関わってくれてうれしかった。いろんな人の思いが詰まった本と伝えたい」

 絵本は税抜き1500円。アマゾンで販売中。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年1月29日