「ソーシャル・ディスタンシング」でコロナ感染予防 体と体の距離を保つため、お店もさまざまな工夫
会話での飛沫、手などの接触を防ぐ
聖路加国際大大学院の大西一成准教授(41)=公衆衛生学=によると、ソーシャル・ディスタンシングは公衆衛生学の用語で、ウイルスの感染拡大を防ぐため「人と人が物理的な距離を取る」戦略を意味する。
具体的には、日常生活で人と「体の距離」を保ち、会話で飛沫(ひまつ)がかからないようにしたり、手などが当たらないようにしたりする、テレワークで接触を減らす、人が集まる場所に行かないことなどが挙げられる。
国の「2メートル」はあくまで目安
密閉空間、密集場所、密接場面の「3密」を避けることもその1つ。飛沫を防ぐ仕切りを設けたり、物の共有をやめたりすることも広い意味で該当する。
どのくらい離れればいいのか。国は3密を避けるために、「2メートル以上」を推奨。大西さんによると、会話による飛沫は2~3メートル飛ぶとされ、国の「2メートル以上」は目安という。
世界保健機関(WHO)は「せきやくしゃみをしている人と、少なくとも1メートルの距離を保つ」ことを勧告。米国では6フィート(約1.8メートル)以上が推奨される。
WHOは「フィジカル」に言い換え
だが、くしゃみをすれば飛沫は3メートル以上飛ぶこともある。特に新型コロナウイルスの場合、感染し得る状態でしばらく浮遊しているとされ、換気も必要。大西さんは「距離を保つことは重要だが、2メートル空ければ安全とは言えない。過信は禁物だ」とくぎを刺す。
一方、外出自粛が長期化し、多くの人がストレスを感じる中、心のつながりは離れないように促す動きも。WHOは最近、物理的な距離というニュアンスを強調した「フィジカル・ディスタンシング」に言い換え、発信している。
「WHO神戸センター」(神戸市)医官の茅野龍馬さん(35)は「ソーシャル・ディスタンシングというと、疎遠になる感じがする。物理的な距離を空けても、社会的なつながりは保たなければならない」と説明。WHOの専門家も3月の会見で、インターネットやソーシャルメディアなどを通じ、人とのつながりを保つ方法を見つけるように呼び掛けた。
レジ待ちの立ち位置、ビニールカーテン、現金はトレーで
コンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストアなどでは、レジ待ちの客の間隔を空けるための立ち位置を示すなどの感染対策を進めている。
名古屋市名東区のローソン名東社台店では、客同士が1メートル以上空けるよう呼び掛けるポスターを掲示。レジに続く通路に立ち位置を示す青いテープを貼り、レジではビニールカーテンで客と店員の間に仕切りを設け、現金はトレーに置いてやりとりしている。
企業が啓発する動きも。電機メーカーのシャープはツイッターの公式アカウントで、「SHARP」という会社名のロゴに「家」という文字をかぶせて表示して外出自粛を呼び掛ける。また、ドイツの自動車メーカーのアウディは、ロゴの4つの輪が一度離れ、再びつながる動画をホームページで公開し、「いまは離れて、心をひとつに。」とうたっている。