親子に迫る「自粛ストレス」 コロナ休校の長期化で虐待・DVリスクも上昇 家庭外につながりを持つには?

奥野斐、浅野有紀 (2020年4月10日付 東京新聞朝刊)
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う学校の休校や、外出自粛の長期化で、親子ともにストレスを抱える状況が続いている。支援窓口も縮小されており、子どもへの虐待やDVなどのリスクも上昇。専門家は、家庭外の人や支援の窓口につながるよう呼び掛けている。
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東京都三鷹市の子ども食堂はテイクアウトに切り替えた。この日は布マスクや菓子も子どもたちに手渡した

三鷹の子ども食堂 食事をテイクアウトに 

 子どもの居場所になっている子ども食堂も、新型コロナの影響で縮小傾向にある。そんな中、家に閉じこもりがちで目が届きにくい親子とつながろうと、工夫して活動を続けている団体もある。

 東京都三鷹市のNPO法人「居場所作りプロジェクトだんだん・ばぁ」は、3月からテイクアウトにしている。これまでは隔週で、都営住宅の集会所に子どもが集まり、遊んだり夕食を食べたりしていた。今は毎週水曜日に入り口で食事を子どもたちに手渡している。

 理事長で精神保健福祉士の加藤雅江さんは「学校がなくなり、子どもたちは行き場がない。元気な様子を確認するためにも回数を増やした」と話す。材料は寄付などでまかない、子ども分は無料。毎回約80食を用意する。

「やることない。ゲームばかり」の子たち 

 ある日の午後5時すぎ、小学生の兄弟がやってきた。「今日、お家から出た?」と加藤さんが声をかけると「出てない。ここだけ」。「何しているの?」と聞くと「ゲームとか」。さりげない会話から困り事や家庭の様子を聞く。

 子連れで訪れたパートの母親(41)は「中学生の子たちは、家でゲームや漫画を見てばかり。少しでも、子どもが行ける場所があると助かる」と話した。

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子どもたちに提供するカレーライスを準備するスタッフ=東京都三鷹市で

 必ずしも家庭が安心できる場所ではない子どももいる。虐待を受けたり、親子関係がうまくいってなければ、なおさらだ。加藤さんによると、家庭でトランプをやったことがない子どももいるといい、「居場所を求めて来る子もいる」と話す。

 休校になって以降、子どもたちから「やることがない」「1日誰とも話さない」という声も聞く。加藤さんは「普段からつながりがないと、親子のSOSを拾えない」と実感している。「学校でストレスを発散できない子たちが心配。こういう時だからこそ、なんとか続けたい」と話した。

◇虐待、DVの相談先一覧
よりそいホットライン 0120(279)338
児童相談所全国共通ダイヤル 189
DV相談ナビ 0570(0)55210
◇子ども向けの相談先一覧
チャイルドライン 0120(99)7777 ※毎日午後4~9時
子どもの人権110番 0120(007)110 ※平日午前8時半~午後5時15分
24時間子供SOSダイヤル 0120(0)78310 ※原則、電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながる

「ストレスで子どもに暴力」「夫に監視されている」…DV増加も懸念 

 「在宅勤務になった夫が、休校で家にいる子に対するストレスで暴力を振るうようになった」「暴力から逃れるため、母子で家を出る準備してきたが、夫の仕事が減り、家にいるので監視されている」

 外出自粛などで自宅で過ごす時間が長くなった母親たちから、全国の生活相談窓口に、助けを求める声が寄せられている。NPO法人「全国女性シェルターネット」(東京)の北仲千里・共同代表は「孤立が深まり、暴力や虐待が深刻化する家庭が増えてくる」と懸念する。

感染予防で窓口を休止する自治体も

 感染拡大が止まらない東京都内では、濃厚接触を避けるため、面談支援を控える自治体も出てきた。利用する側からは「感染が怖いので、会員制交流サイト(SNS)で相談できるようにしてほしい」という声も上がっている。

 4月に面談の休止期間を設けているのは、江戸川、目黒、世田谷の各区。台東、文京、千代田、葛飾区も緊急時を除き、面談を控えている。いずれも電話相談は継続中。千代田区は例年、子どもの学年が変わるタイミングの3月にシェルターに入る人が多いが、今年は逆に相談が減った印象という。担当者は「配偶者が自宅にいるため電話しづらいのでは。つながった時にはすでに深刻なケースが多い」と話す。

 全国女性シェルターネットは3月30日、こうした状況を踏まえて内閣府に要望書を提出。
▽被害者が自治体の窓口に逃げ込んだら、一時保護する
▽所得減少の世帯へ現金給付する際、家を逃げ出した被害者に届かないことがないよう、被害を申告した人へ柔軟に対応する
―ことなどを求めた。内閣府は各都道府県に3日付で、支援の継続や速やかな一時保護などの適切な対応を通達した。

 北仲さんは「窓口の電話がつながりにくかったり、面談ができないこともあるかもしれないが、我慢をせずに支援につながってほしい」と呼び掛けている。

高まるストレスどうしたら…児童精神科医の田中哲さんに聞く

子どもと家族のメンタルクリニックやまねこ院長で、児童精神科医の田中哲さん

子どもと家族のメンタルクリニックやまねこ(世田谷区)院長で、児童精神科医の田中哲さん

行動の後ろにある「気持ち」に目を向けて

 親子それぞれに付き合いや現実のふれあいが制限され、家の中で顔を合わせる時間が増えると、互いに気に入らない事が目につきます。

 親は「勉強しない」、子どもは「口うるさい」と相手の行動に注目しがちですが、親は子どもがどんなことを考えているのか、行動の後ろにある気持ちに目を向けることが大切です。

テレビ電話で気張らし 親も1人の時間を

 今、皆が余裕がなくなっているというのは、意外と子どもの方が分かっています。親はまず、普段通りにいかない状況を認めること。あら探しはいったんやめて、「宿題をやりたくなかったわけを一緒に考えようか」などと声をかけ、できることを探しましょう。

 「子どもだけでなく、夫もテレワークで家にいる。なんとかしてほしい」というお母さんの声も聞きます。親も習い事やママ友との付き合い、パートなどがなくなって行き詰まっています。友達と連絡を取る、インターネットを使ってテレビ電話をするなど、安全にできる気晴らしを考え、親も1人の時間を持つことが大切です。

 感染対策をして、近所のいくつかの家庭が一緒に遊んだり、勉強をしたりできればいいですね。工夫して、普段とは形を変えても、つながりを持つことが大事です。

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  • 匿名 says:

    子供を携帯で頭殴りました。
    頭いたがって泣いてます😭

      

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