「鬼滅の刃」惨殺シーンを子どもに見せていいのか賛否両論 映画はPG12、保護者が配慮すべき点は?
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「トイレや暗闇を怖がるようになった」
古泉さんは昨年11月掲載の子育て日記で、「鬼滅の刃」を見たいと言い出した養子・うーちゃん(6つ)への心配をつづっていた。「アニメの鬼が怖い。夜眠れなくなったり、おねしょをしたりしたら本人もつらいと思う」。その半面、「主人公の炭次郎のように努力する尊さや、妹をかわいがることを学んでくれたら」とも感じた。
読者からは、子どもに影響があったとの声も。父親が6歳の息子を映画に連れていくと、「トイレや暗闇を怖がるようになり、どこでもついてきてほしいと言うようになった」。小学2年の娘に見せるか判断するため、漫画を読んだ夫婦は「鬼の惨殺シーンが多い。味方の人間も死ぬ。見せるのは、物の善悪が分かり、人の気持ちが推し量れるようになってからでいい」。
6歳の息子と映画を見た保護者は「流血の場面よりも、心に響く内容が多々あるので、子どもも憧れるのでしょう。人の優しさを学べると思う」とつづった。
PG12とR指定の違い 禁止ではない
昨年10月に公開され、歴代最高の興行収入を更新している映画「鬼滅の刃」。映画倫理機構は、小学校低学年以下には不向きとされる「PG12」に指定した。
審査員の尾崎誠さん(63)は「R指定と違い、PGは『見てはいけない』という年齢制限ではない」と話す。「鬼滅の刃」の指定理由については「刀剣による殺傷・出血の描写が見られるが、保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できる」とする。
同じ年齢でも、受け取り方には個人差がある。尾崎さんは「子どもが見たいと言ったら、保護者が映画の予告編や公式サイトなどで内容をチェックしてほしい。その上で子どもの性格や成長の度合いを考えて判断して」とアドバイスする。
子どもの側は「友達も見ているから」「漫画が面白いので、アニメでも見たい」と見たがるケースが多いが、尾崎さんは「漫画と映像、漫画と実写では刺激が違う」と指摘。「頭ごなしに禁止するのではなく、『どうして見たいのか』という話し合いをぜひして。保護者も意見を子どもにきちんと伝えてほしい」と勧める。
機構事務局長の石川知春さん(62)は「PG12指定には、親子で内容を語り合えるような作品も多い」と話す。「子どもがどう感じたのかを聞き、『お父さんはこう思う』と親子でキャッチボールができるとよいと思う。子どもが怖がっていたら、現実ではないことを子どもにも分かる言葉で伝えてあげることが大事です」
小さい子ほど、細やかな配慮が必要
とはいえ小さい子には細やかな配慮も欠かせない。発達心理学が専門の渡辺弥生・法政大教授は「大きい音や強い光でも怖がる子どももいる。大人は大丈夫だと思っても、子はショックを受けていることもある」と指摘する。受けた衝撃の強さや長さ、本人の感じ方によっては、トラウマ(心的外傷)になる可能性がある。「映画館はテレビと違い、消したり別の部屋に逃げたりできない。衝撃にさらされる時間が長く、より慎重な判断が必要」と呼びかける。
また、人は攻撃行動を見るだけで、その行動を獲得する(学ぶ)という。「特に小学校低学年くらいまでの幼い子ほど、善悪の判断や文脈からの理解をせずに強い刺激にさらされると、見たまま、聞いたままをまねしてしまうこともある」と注意を促す。
PG12とは
映画倫理機構が定める4区分の1つ。指定された作品には、内容が刺激的で、小学生には不適切な内容も含まれている。小学校低学年以下には不向きとされる。高学年の場合でも成長過程、知識、成熟度には個人差が見られることから、保護者による助言・指導(Parental Guidanse)が必要とされる。カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した「万引き家族」(是枝裕和監督)も「年少者の窃盗・万引の描写が見られる」として指定された。
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