4人のゾンビが襲いかかってくる〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
(2021年2月5日付 東京新聞朝刊)
長男は、いまだ半袖半ズボン。「風邪ひくと大変だから、上着を着てよ」と妻がどれだけ言っても、「オレは誇り高き戦士だから」と訳のわからないことを言って、半袖半ズボンで学校にいく。
ところで、四男が生まれて、はや4カ月。そろそろ夫婦そろって、子育てに息切れしてきた感がある。親2対子4のバランスは、思っていたよりもハードで、4人のゾンビが次々に襲いかかってくるよう。
近頃は、上の2人がくだらないことでけんかして泣く、三男は眠いから泣く、四男はとりあえず泣くので、誰も泣いていない時がないぐらいで、こっちが泣きたくなってくる。
それでも、ぷくぷく太ってきて、表情も出てきた四男が、かわいすぎて脳みそが溶けるのか、「やっぱり一人増えてよかったなあ」と思うのです。
その四男は、風呂に入ると必ずといっていいほど、うんちをする。乳児特有の黄色い液状のうんちは、その流出を必死で食い止めようとする風呂おけをすり抜け、無念にも湯船全体に広がっていく。
「うんちだ!」と、子どもたちがクモの子を散らして風呂から出ていく中、僕は寒いし、出しなにシャワーを浴びれば済む話と覚悟を決め、「たまごスープみたいだな」と思って、引き続き湯船につかっている。
猛烈に冷え込んだ朝、長男は、とうとう戦士の誇りを捨て、パーカーを着て学校に行った。下は半ズボンのままだけど。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(リトルモア)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。10歳、7歳、3歳、0歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
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