医療的ケア児を育てる福満美穂子さん 結婚、離婚、NPO立ち上げ…「障害児の親の生き方」を本に
奥野斐 (2021年8月7日付 東京新聞朝刊)
寝たきりで人工呼吸器が必要な医療的ケア児を育てながら、自ら重い障害の子が通う施設を運営する福満美穂子さん(49)=東京都中野区=が、親子の自立に向けた日々を本にまとめた。障害児を持つ親の生き方がテーマで、福満さんは「コロナ禍で皆が不安を抱えている今、そこから逃げず、不安を抱えながらも前向きに生きていこうという気持ちを込めた」と話している。
17歳の長女 脳性まひで知的障害
本は「不安ウーマン 医療的ケア児のシングルマザー 明日を生きていくために」(ぶどう社)。出産後に分かった長女華子(かこ)さん(17)の障害、結婚生活と離婚、NPO法人「なかのドリーム」の立ち上げや、ひとり親の生きづらさ、経済的な困窮もつづった。
華子さんは脳性まひで重い知的障害がある。今は気管切開をして人工呼吸器も必要だが、2歳ぐらいまでは医療的ケアもなく、訪問看護やヘルパー制度が利用できなかった。福満さんは「誰にもどこにもつながりがなく、先が見えない不安があった」と言い、本でも「よく生き延びたな」と当時を振り返る。
障害児を持つ女性の自立「想定外」
離婚前は、別居していても、障害児向けの特別児童扶養手当が世帯主の口座に振り込まれた。6年前に離婚した際には、親権者が福満さんでも子は父親の戸籍に入ったままで、家庭裁判所に申し立てをして自分の戸籍に移す手続きが必要だった。「日本は世帯主義で、妻は夫に属する者との意識を感じた」
また、就労や生活のため女性活躍をうたう行政の相談窓口に出向いたものの「相談に応じられない」と断られたことも。障害児を持つ女性の自立は想定外といった対応を受けた。
親もステレオタイプに縛られないで
本は、親子の日々を紹介した前著「重症児ガール ママとピョンちゃんのきのうきょうあした」(ぶどう社)に続き、約6年ぶり。日本てんかん協会都支部の機関紙「ともしび」に連載する文章に大幅に加筆した。
現在、華子さんのケアのため週に30人余りのヘルパーや看護師らが自宅に出入りする。「人の助けを得て、制度を使って今がある」と福満さん。「障害児はかわいそうで大変、というイメージだけでは語れない。親の生き方もステレオタイプに縛られず、もっと自由でいいのでは」と言う。
本は192ページ、1600円(税別)。