小中学生が「麻生区SDGs推進隊」結成 川崎から発信する「グローカル」

安田栄治 (2022年2月21日付 東京新聞朝刊)

 地域の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組むため、2020年9月に市民団体「あさおのSDGs」を立ち上げた今井雄也さん(44)は、川崎市麻生区在住の30~40代の父母8人でSDGsにつながる活動を模索している。その一つとして、地域の課題の発見と解決を図り、より住みよいまちづくりを推進するため麻生区が取り組む「市民提案型協働事業」に参加。小、中学生を対象とした「麻生区SDGs推進隊」の結成を企画した。

SDGsにつながる場所を地図に

 発案のきっかけは、当時小学5年生の娘との食事中の会話だった。「地球温暖化や、死んだクジラのおなかから大量のプラスチックが出てきたニュースを伝えても、その怖さが初めは分からなかったようだ」と、大人が環境破壊の怖さなどをしっかり伝えていないことを痛感。注目されているSDGsのことを説明すると「ストローを使わなくなったらプラスチックがどれだけ減るのか、真剣にSDGsを考えてみたい」。娘の言葉が背中を押した。

「あさおのSDGs」を立ち上げた今井雄也さん

 2021年6月から参加者を募集すると、麻生区内在住の小学4年~中学1年までの23人が集まり、同7月17日に「推進隊」が発進した。主な活動は「麻生区サステナビリティマップ」の作成。SDGsにつながる場所を探して地図をつくり、可視化することでSDGsを区民で共有していく。

 この半年間、子どもたちの活動を温かく見つめてきた。「大人の目を入れず、子どもたちの目で選択した地図には将来を見つめる視線のたくましさがあり、大人も学ぶことは多い」と一目置いている。

 麻生区出身。2011年の東日本大震災を機に太陽光発電の関連会社に入社。その後、バイオマス発電のシステムをつくる会社に移籍し、全国の山々を回って発電所の建設可能な地を探す業務にあたった。その経験が今の活動を支える。

 あさおのSDGSの活動では、地球規模のグローバルと地域的なローカルの言葉をかけた「グローカル」を提言。「Think Glocally Act Locally(地域視点で考え 地域で行動しよう)」と呼びかけている。「推進隊の活動はどの地域でもできる。麻生のモデルケースを確立させ、川崎市の他の6区だけでなく、県内や全国の地域で展開してほしい」

麻生区SDGs推進隊

 2021年度の活動に23人の子どもたちが参加。新年度の募集もあるが、子どもたちに「卒業」はなく、いつまでも参加できる。今年1月に麻生区SDGsフォーラムを開催し、子どもたちが半年間の活動を報告した。ゲストで出席した川崎市の福田紀彦市長に、作製中の「麻生区サステナビリティマップ」が完成すれば市役所で手渡すことを提案すると、市長も快諾。地域を見つめる「子ども目線」がさらに光を増している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年2月21日