川崎区中1殺害事件から7年 引きこもり、貧困、非行…複合的な課題を支えるには

竹谷直子 (2022年2月20日付 東京新聞朝刊)
 川崎市川崎区の多摩川河川敷で同市の中学1年の上村遼太さん=当時(13)=が殺害された事件から20日で7年。事件をきっかけに発足した「かわさき子どもの貧困問題研究会」の共同代表、青池昌道さん(77)は、少年たちの孤立なども背景に起きた事件だと考え続けてきた。「競争社会で『排除』していくのではなく、命を大切にする、個を大切にする社会環境をつくっていくことが大切だ」と訴える。
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取材に応じる青池さん=中原区で

川崎中1男子殺害事件

 2015年2月20日、川崎市川崎区の多摩川河川敷で中学1年上村遼太さん=当時(13)=が、当時18歳の無職少年と当時17歳の少年2人に首をカッターナイフで複数回切り付けられるなどして殺害された。主犯格の当時18歳の少年は殺人と傷害罪、残りの2人は傷害致死罪でいずれも不定期刑が確定している。

縦割り行政の壁、打ち破って連携を

 かわさき子どもの貧困問題研究会は事件後、弁護士や児童相談所職員、子どもの支援に関わるNPO法人などの有志で集まり、勉強会を開催。2017年からは講演会やシンポジウムなどで、子どもの貧困や頼り合える社会づくりなどあらゆるテーマを広く考える機会を設けてきた。

 「子ども支援に関わる一人として事件はショックだった」と青池さんは振り返る。青池さんは2014~2021年、引きこもりの若者の居場所づくりや就労支援をする「ブリュッケ」のセンター長として活動。既に居場所づくりと関係機関の連携の必要を感じていたという。

 そこに事件が起きた。加害少年たちの大人からの孤立や、不登校など上村さんの異変への対応などさまざまな問題が重なった、と受け止めた。

 引きこもりのほか、貧困や非行、親の死などあらゆる困難を抱える若者と向き合ってきた経験から「一人一人が複合的な課題を抱えている。生活保護のケースワーカーからは、世帯主だけで子どもは見えない。学校は親のことがよく見えない。行政の縦割りの壁を打ち破って連携していくべきだ」と強調する。

大人の余裕のなさが子どもにも波及

 同会共同代表の一人、本田正男弁護士(61)も「社会的に自分の生きてる価値を見いだせずに逆噴射する事件は、今も起きている。経済が低迷し、大人に余裕がなくなり、子どもにも波及している」と指摘する。

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本田弁護士=川崎区で

 青池さんは「社会構造のゆがみや欠陥がある中で起きた事件。助けられる、防げる事件だったかもしれない」と悔やむ。「多様性が重んじられ、ありのままを受け入れられることが、困難な子どもを支え合う社会につながっていく。それが今非常に大切」と語った。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年2月20日

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