物語で学ぶ「放射性物質」 八王子の団体が子ども向け冊子を作成
布施谷航 (2022年3月11日付 東京新聞朝刊)
東京電力福島第一原発の事故から11年になるのを前に、食品や土壌の放射能汚染を測定している八王子市の市民団体「八王子市民放射能測定室 ハカルワカル広場」は、放射性物質に関する子ども向けの冊子を作成した。どのような経路をたどって原発の燃料になるかや、事故を経て自然界にとどまっている現状などを紹介している。
放射性物質「ラディオ」が主人公の物語
タイトルは「旅するラディオ」。オーストラリアの地中から採掘された放射性物質「ラディオ」が主人公の物語仕立てにした。船で日本に運ばれたラディオは、福島第一原発の燃料として使われた後、事故を契機に八王子市内の森に飛来。今も八王子の公園にとどまっている様子を描いた。
時がたつにつれ事故について知る機会が減る中で、子どもたちにも放射性物質を巡る事実を伝えようと、パルシステム東京市民活動助成基金の支援を受け、ハカルワカル広場のメンバーが昨年10月ごろから製作に取り組んできた。物語はメンバーの二宮志郎さんが考案した。
「主観を入れず、正しい知識を伝えよう」
編集作業の中心メンバー、石井暁子さんは「良いか悪いかという主観を入れず、正しい知識を伝えようと心掛けた」と話す。原発事故の悲惨さを強調せず、放射性物質が今も身近にあることを示すストーリーにした。イラストを担当したイズミコさんも「放射性物質は、人が掘り起こさなければ地中深くに埋まっていた存在」として、ラディオを悪者に描かないよう心掛けたという。
これまで調査してきたデータを元に、側溝や排水溝の土、コケなど放射性物質が残りやすい場所も示している。
A5判、27ページで計4000部作成。ハカルワカル広場で無料で配布する。希望者には郵送(送料は必要)する。
問い合わせはハカルワカル広場のホームページで受け付けている。