累計60万部の大ヒット「かがみのえほん」 作者の渡辺千夏さんはどんな人?
神谷慶 (2022年6月28日付 東京新聞朝刊)
絵本を開くと、まるで目の前でシロップがホットケーキに注がれたり、虹の輪が幾重にも連なったりして見える。鏡のように反射する紙を使い、立体的世界が広がる絵本「かがみのえほん」シリーズ(福音館書店)が人気だ。2014年以降刊行された3作の累計発行部数は約60万部に上る。
結婚を機にメーカーを退職、大学院へ
作者の渡辺千夏さん(38)幼少期から絵が大好き。ビジュアルデザインを学んだ筑波大時代から、鏡の視覚効果を生かした本の形の造形作品を制作していた。「他の人と違う方法で、自分なりに面白く発展させられると思えたアイデアの一つが鏡だった」
卒業後はメーカーに4年勤め、家庭用品のデザインや企画に関わる充実した日々を送った。結婚を機に退職後、夫の勧めもあって、フリーのグラフィックデザイナーを志して愛知県立芸術大大学院へ。人との縁にも恵まれ、在学中に絵本を出版できた。
1冊の本は、小さな紙に描いた数百にも及ぶ試作品の結晶。「開いた瞬間の驚きを味わって」と願う。2児の母でもあり「子どもから学ぶことは多い。親子で楽しめる別の仕掛け絵本も出せたら」と構想を練っている。愛知県知立市出身、在住。