ひとり親の「公共冷蔵庫」24時間無料です 草加市のスーパーが設置、食品ロス削減へ

浅野有紀 (2022年8月2日付 東京新聞朝刊)

始動した「コミュニティフリッジ草加」

 食品ロスの削減に情熱を注ぐ埼玉県草加市のスーパー「フードリカバリースーパーゼンエー」は、ひとり親世帯を対象に24時間、食品を無料で取り出せる「コミュニティーフリッジ(公共冷蔵庫)」を7月中旬に設置した。メーカーがこれまで廃棄してきた規格外商品などの寄付を募っている。

人目を気にせずアプリで解錠

 ゼンエーの社長植田全紀(まさき)さん(42)はかねて、食品ロス削減のため、規格外の野菜や菓子などを仕入れ、格安で販売してきた。国内で推計570万トンにも上る廃棄をどうにかしたいと、環境を考えるオンラインセミナーに参加。岡山市の一般社団法人が公共冷蔵庫を国内で初めて設置したことを知った。すぐにノウハウを聞き、始めることにした。

 店の倉庫を活用し、業務用の冷蔵庫と冷凍庫を1台ずつ完備。企業から規格外商品を募るほか、個人の持ち込みや寄付品の購入もゼンエーのホームページから受け付ける。利用は登録制で、児童扶養手当を受給するひとり親世帯が対象。スマートフォンなどのアプリで解錠できる電子ロックで、人目を気にせずいつでも出入りでき、利用により家計の一助としてもらうことを期待している。

「全国で導入する人を増やしたい」と意気込む植田さん

 岡山市の例では、寄付側企業の負担は運搬コストのみ。だが、植田さんはあえて持ち込み料を徴収する。公共冷蔵庫の仕組みは善意に頼るだけでは全国に広がらないと考えるためだ。持ち込み料は廃棄コストより安くすむよう、重さ100kg以下は無料、200kgまで3000円などと設定した。

食品会社などから寄付が続々

 持ち込み料は、寄付品の賞味期限のデータベース化や公共冷蔵庫の管理などに充て、作業は越谷市の就労継続支援B型事業所「Cuddle(カドル)」が担う。まずは事業所の職員で稼働させ、ゆくゆくは障害者の雇用につなげていくという。

 寄付を集めて生活困窮者に配るフードバンクやフードパントリーという仕組みはすでに浸透しているが、公共冷蔵庫なら日時や場所を設定しなくても自由に持ち出せるところが「魅力的」と植田さん。開始以来、食品会社などからはナッツやジュース類など、個人からは米などの寄付が続々と集まっている。

 植田さんは「まだ食べられる商品を焼却するという今の当たり前をどうか見直してほしい」と呼びかけている。問い合わせは、コミュニティーブリッジ草加のWebサイトで受け付けている。

コミュニティーフリッジとは

 国内で初めて2020年に導入した岡山市の一般社団法人「北長瀬エリアマネジメント」によると、2012年にドイツで始まった環境保護活動の一つ。飲食店やスーパーなどの小売店が売り切れない商品を路上の冷蔵庫に入れ、必要とする人々が受け取れる。国内では、北長瀬エリアマネジメントがこれまで草加市を含む福島、大阪、山口、佐賀の6カ所にノウハウを提供した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年8月2日