アレルギー対応の粉ミルクを無償提供します コロナ禍で困窮する女性をNPOが支援

長田真由美 (2021年12月4日付 東京新聞夕刊)
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アレルギー対応の粉ミルク(アトピッ子地球の子ネットワーク提供)

 コロナ下で困窮家庭が増える中、アレルギー対応の粉ミルクを無償で届ける認定NPO法人「アトピッ子地球の子ネットワーク」(東京)の試みが注目されている。症状の原因物質(アレルゲン)を除くなどした粉ミルクは通常より高額なため、経済的な理由で栄養不足に陥る乳幼児を減らすのが目的だ。昨年5月から先月末までに延べ400人以上が受け取った。

値段は通常品の2~3倍「本当に助かった」

 「大人の食費を切り詰めてミルク代にあてるしかないと思っていた」

 娘(2つ)に重度の乳アレルギーがある名古屋市の女性(42)はそう話した。娘は普通の粉ミルクを飲むと全身に湿疹が出る。大豆と卵にもアレルギーがあるため、それらの成分も除去した粉ミルクを常備する必要があった。

 だが、値段は4~5日分で3000円を超え、通常品の2~3倍だ。コロナ禍で夫婦ともに収入が減る中、昨秋に頼ったのが「アトピッ子」だった。「1カ月分に当たる粉ミルクを受け取った時は本当に助かった」と振り返る。

問い合わせの6割が、収入を断たれた女性

 「アトピッ子」が希望する家庭向けに配布を始めたのは昨年5月。大都市を中心に感染が拡大していた時期で、以降、2、3カ月ごとに計4回を重ねる。

 事務局長の赤城智美さん(61)は「アレルギーのある赤ちゃんにとってアレルゲンを含まない粉ミルクは命綱」と力を込める。当初、問い合わせの6割近くはコロナ禍に伴う雇い止めや勤務先の倒産などで収入を断たれた女性だったという。

 「アトピッ子」では粉ミルクの購入費用について、民間企業や公益財団法人などの助成事業を活用。受け取った人から、「気に掛けてくれる人がいてうれしい」「心の支えになった」といった声が寄せられている。

5回目は来年1月末に締切 緊急性を考慮

 国立成育医療研究センターが2011年1月~2014年3月に生まれた約9万3000人を3歳まで追跡調査したところ、食べてすぐ皮膚や粘膜、消化器、呼吸器などに症状が出る「即時型食物アレルギー」は、1歳時点が7.6%、2歳6.7%、3歳4.9%。1歳での原因食物で最も多いのは鶏卵の5.3%で、牛乳2.1%、小麦0.5%だった。粉ミルクは牛乳の回答に含まれるが、単独では調査していない。

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無償提供するために用意された食品(アトピッ子地球の子ネットワーク提供)

 「アトピッ子」ではカレールーやパスタなどアレルギーに対応した食品も少しずつ増やしている。10月末から募集が始まった5回目の締め切りは来年1月末で、申し込みフォームから申し込む。粉ミルクは100人、食品は30人を予定。

 希望者が多い場合はひとり親かどうかや、アレルギーの重症度などを基に、緊急性が高い家庭を優先する。数に限りがあるため「希望する人全員に届けられるようにしたい」と活動への寄付も募っている。問い合わせはアトピッ子地球の子ネットワーク事務局=Eメール info@atopicco.org=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年12月4日

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