【現場ルポ】千葉市で川遊びの中学生死亡 普段は深さ20cm、増水して見えない取水口パイプに足が… のどかな川にも潜む危険

中谷秀樹 (2022年9月8日付 東京新聞朝刊)

中学生が溺れて死亡した生実川。通常は中央の水路を流れるが、事故当時は増水で雑草が生い茂るエリアまで増水していたという=千葉市中央区で

 今月2日、千葉市内で中学1年の男子生徒(12)が川遊び中に溺れて死亡した事故。命を落とした少年は川に設置されていた取水口のパイプに右脚を吸い込まれて脱出不能に陥った。直径30センチの管に雨で増水した水が流れ込み強い水圧が働いたとみられる。子どもたちの遊び場で起きた痛ましい事故の現場を訪れた。

穏やかな流れ ザリガニ釣りの遊び場

 千葉中央署や市消防局によると、事故は2日午後2時50分ごろ、千葉市中央区生実(おゆみ)町の生実川で遊んでいた男子生徒3人のうち、1人がパイプに脚を吸い込まれた。身動きできなくなり、水面に横たわり顔が水に漬かった状態で溺れたとみられる。消防が約30分後に救助したが、搬送先の病院で死亡が確認された。

 晴天の6日午前、現場を訪れると、川の大部分が雑草に覆われていた。中央部に幅1.2メートル、深さ20センチのコンクリートで固められた溝状の水路があり、そこを水が穏やかに流れているだけだった。地元住民によると、地域の子どもたちがザリガニやサワガニを捕まえるなど川遊びの場として定着していたという。少年が吸い込まれたパイプは、水路に足を入れるとスネほどの低い位置にあった。

少年の右脚が吸い込まれた取水口パイプ。救助作業で破壊したとみられる形跡がある

水位は膝上から腰ぐらい…「危ない」

 河川を管理する千葉市によると、この取水口パイプは塩化ビニール製で直径30センチ。現場近くで工事を長年続ける市内の男性(39)は「事故があった日、川の水はコンクリートの溝を超えて雑草が生えている堤防下まであふれ出て、水かさは立った状態で膝上から腰ぐらいの高さまで来ていた」と居合わせた事故発生時の状況を振り返る。

 「男の子が吸い込まれたパイプ口は増水で見えなくなっていた。いつもと水位が違うので『危ない』と注意はしていたんだけど…」

 市総合治水課も「通常の水位が20センチで、周囲に水位計がなく正確な数値は不明だが、当時は水かさは増していた」としている。

直径30cmのパイプ 相当な水圧に

 気象庁によると、当日2日は関東地方に前線が停滞した影響で天候が不安定だった。千葉市の観測地点で正午に1時間当たり15ミリのまとまった雨を記録し、前日1日夜も同13ミリの雨に見舞われた。消防関係者は「直径30センチの細いパイプに大量の水が流れ込めば、相当の水圧で吸い込まれたはず」と推測する。

 事故を受け、神谷俊一市長は「今のところ明らかな市の管理瑕疵(かし)には当たらないのではないか」としつつ、「特に増水時は川の流れは想像以上に強い圧力が掛かるので、危険箇所には絶対に立ち入らないよう注意喚起する」と再発防止を誓う。現場周辺の堤防に立ち入り禁止のロープを設置し、市教育委員会も市内の小中学校などに校区内の安全点検を指示した。

 川の近所に住む70代男性は困惑を隠さない。「ロープや柵があっても、入ろうと思えばどこからでもできる。普段はのどかな川でも、どこに危険が潜んでいるか分からないと思い知らされた」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年9月8日