円安の影響、子どもの心臓移植にも… 費用3.5億円が5億円超に膨らむ 2女児の両親が窮状訴え
10歳女児「思いきりダンスしたい」
「パパのご飯をママと一緒に作りたい。友達と遊んだり、ダンスを思いっきり踊ったりしたい。やりたいこと、行きたい場所がたくさんあります」
川崎市幸区の小学5年、五十嵐好乃(この)さん(10)は、市役所で開かれた会見に病室からオンライン参加し、気丈に夢をそう語った。
好乃さんは2年前に進行性の拡張型心筋症を発症し、現在は国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)に入院。昨年9月に補助人工心臓を装着したが、経過も思わしくなく、国内より早期の移植が可能な海外に望みをつなぐ。米国テキサス州の小児病院の受け入れが今春、決まったが、病院に支払う前払い金の交渉が想定より長引き、その間に円安が進んだ。
会見した父「娘の命を諦めたくない」
好乃さんの友達の保護者らでつくる「このちゃんを救う会」の募金目標額は、1ドル=155円で換算し5億4000万円。内訳は前払い金4億1850万円、渡航費8000万円、現地滞在費800万円など。補助人工心臓を装着しているためチャーター機での渡航となり、費用がかさむ。父でタクシー運転手の好秀さん(46)は「海外移植にかかる巨額の費用は、賄いきれない。私たちだけでは娘の願いをかなえてあげられない。身勝手と分かっているが、娘の命を諦めたくない」と声を震わせた。
国際移植者組織「トリオ・ジャパン」の横山慎也事務局長(51)によると、円安前の昨年に募金活動し、今年5月に手術した好乃さんと同じ症状の神奈川県の女児のケースでは3億5000万円で、1.5倍ほど増えた。
横山さんの長男(17)が12年前、米国で心臓移植を受けた当時は1ドル=90円前後で、募金は4分の1ほどの約1億3500万円で済んだ。横山さんは「海外渡航移植で5億円を超える募金目標は前例がない」としつつも、半年程度での目標達成に期待をかける。
「このちゃんを救う会」への問い合わせは事務局=電話044(223)6412(平日午前10時~午後3時)=へ。振込先口座などの詳細は、会のウェブサイトで紹介している。
重症心不全の1歳女児 早期の移植を
東京都豊島区の佐藤葵(あおい)ちゃん(1つ)も、米国での手術を待ち望む一人だ。両親が、千代田区の厚生労働省で記者会見し「命を救うためにはやるしかないと決断した」と思いを吐露した。
葵ちゃんは先天性心疾患を抱え、これまでに手術を4回受けたが改善せず、「重症心不全」と診断。心臓のポンプ機能が低下し、必要な血液が送り出せず、現在は埼玉医科大国際医療センター(埼玉県日高市)に入院している。装着している補助人工心臓は脳梗塞や感染症のリスクも高く、早期の移植が必要という。
毎日頑張っている娘「どうか助けて」
支援団体「あおちゃんを救う会」によると、募金目標額は1ドル=148円で換算し5億3000万円。内訳は、前払い金が3億7000万円、医師らも同乗する医療用ジェット機のチャーター代などの渡航費8100万円など。
母親の清香(さやか)さん(38)は「抱き上げると手の中にすっぽりおさまる体に補助人工心臓とペースメーカーを着け、ほとんど病院から出たことがなくても、毎日新しいことを学んで頑張って生きています。どうか葵を助けてください」と訴えた。
「あおちゃんを救う会」の詳しい情報は、会のウェブサイトへ。
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