注文の多い公園、楽しめますか? 24枚もの禁止看板 練馬区の担当者に疑問をぶつけると…

(2023年2月20日付 東京新聞朝刊)

禁止看板が乱立している「いずみの里公園」。同じ文言が書かれた看板も目立つ=東京都練馬区で

 「近くの公園は、注意書きの看板だらけで入るのに躊躇(ちゅうちょ)する。これで楽しく遊べるのだろうか」。東京都練馬区の飯沢(いいざわ)文夫さん(73)から、東京新聞の「ニュースあなた発」に情報が寄せられた。この公園では、1枚もなかった禁止看板が、開園から6年で24枚にまで増えていた。なぜ禁止だらけの公園になってしまったのか。 

苦情のたびに立て「何枚か分からない」

 飯沢さんが指摘する「いずみの里公園」(練馬区)は住宅地の一角にある。テニスコート10面分ぐらいの広さに、禁止事項を書いた看板があちこちに立っている。A3用紙サイズに9行にわたってぎっしりと注意書きが記された看板も。バイク禁止の看板は3枚あった。サッカーボールで遊んでいた男児(8つ)は「こんな数え切れないほど看板がいるの?」とあきれていた。

 公園を管理する練馬区西部公園出張所の宮津裕子(ひろこ)所長は「苦情のたびに看板を立てているので、今、何枚あるか分からない」という。記者が24枚あったことを告げると「それは多い。苦情がなくなれば撤去しようと思っているが…」と歯切れが悪い。

練馬区「いずみの里公園」の主な禁止看板

  • 固いボールを使った遊びはやめてください
  • すべりだいをかけあがらないでください
  • 火気厳禁 バーベキューや花火などは禁止です
  • 空き缶やペットボトル等のゴミは持ち帰ってください
  • マスクを着用し、密集、密接を避け、すいた時間、場所を選ぶよう心がけましょう
  • 植込みに入って植物を踏むと枯れてしまいます。注意してください
  • 公園の植物はみんなの物です。折ったりして遊ばないでください
  • 園内バイク 乗入禁止
  • 公園利用者へ重要なお知らせ この周辺は比較的閑静な住宅地で、緑豊かで安全で良好な住宅環境の保全が必要です。最近、植栽内の低い樹木の踏み荒し、枝折りが多発しています。また、すべり台の駆け上り等の危ない行為、うるさい音を発生させる行為が頻発しています。緑地保護、静かな環境、安全な地用、近隣とのトラブル回避のために、皆様のご協力をお願いいたします

 公園の近くに住む男性(87)は「苦情を言ってきた人に対して『ちゃんと対応しましたよ』という区のポーズでしょ。看板を立てて、どれだけの効果があるのか」と冷めた目で見る。

コロナで苦情増加 「看板頼み」の実情 

 練馬区には700カ所近い公園があり、東京23区で最も数が多い。年間に寄せられる苦情は約3000件に上る。区によると、コロナ禍で外出を控えるようになってから件数は増えており、苦情対応に多くの時間を割かれているという。

 練馬区道路公園課の小山(こやま)和久課長は「看板は少ないほうがいいが、まずは苦情に応えることが優先。素早く対応できるし、看板を理由に注意しやすい」と、トラブル回避へ看板頼みになっている実情を口にする。

 関東学院大建築・環境学部(こども環境学)の中津秀之准教授は「禁止看板の多さは、地域のコミュニケーション不足を示すバロメーター。重要なのは住民同士の対話による合意形成だ。もっと住民を巻き込んだ公園運営を考えては」と提案する。

川崎市や横浜市「規制だらけ」から脱却

 禁止看板が目立つ公園は練馬区に限らない。かつて東京新聞の発言欄にも、ボール遊び禁止の看板を見た北区の男児(11)から「友達と楽しく遊ぶためにある公園も、遊べないなら意味がない」との投稿が寄せられた。

 そんな「規制だらけ」の公園から脱却しようという動きもある。

 川崎市は3年前から、禁止していたボール遊びについて、地域の理解が得られれば看板の表記を変更し、周囲に迷惑をかけない条件で遊べるようにした。横浜市では、地域住民が公園を管理する「公園愛護会」という住民参加型の公園管理をしている。市内約2700カ所のうち、9割が愛護会の管理だ。

住民の自主管理制度 高齢化で広がらず

 その1つ「富岡並木ふなだまり公園」(横浜市金沢区)は、いずみの里公園の10倍以上の広さを持ちながら、禁止看板は「水に入ってはいけない」の1枚しかない。

 ふなだまり公園北側エリアの愛護会は10~80代の36人で構成。会長の高島哲さん(75)は「景観を守るため、禁止看板は立てないようにしている。苦情があれば会のメンバー同士で話し合って解決策を見つけている」と話す。

 練馬区にも同じような「住民自主管理制度」という仕組みがある。申請は自治会単位で、「清掃は週3回」「3カ月ごとに報告書提出」などと参加条件が厳しい。制度ができて20年以上たつが、導入は全体の1割にも満たない。区の小山課長は「自治会の高齢化による担い手不足もあって、なかなか利用が広がらない。住民の声を吸い上げられるような運営をしたいのだが…」とこぼす。

【続報】24枚も禁止看板がある公園、練馬区議会でも議題に「不要な看板は撤去する」


元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年2月20日

コメント

  • 看板の内容は割とあっても大きな問題にならないことばかりだと思うが... あとこれは気になるのだが、なぜ内容が同じ看板がいくつもあるのだろうか?
    酔い遊びやらない 男性 無回答 
  • 当方昔ながらの団地型住宅に住む高齢者の一人です。住環境は小森や河川もあり多数の野鳥や魚影も見受けられる比較的自然に恵まれた立地で、目の前に児童公園がありいつも親子連れや近隣の幼保育園の子供たちの賑やか
    ひらうさぎ 男性 70代以上