共同親権の法案提出、今国会は見送り 法務省は「時期尚早」 法制審部会で意見まとまらず

(2023年2月28日付 東京新聞朝刊)
 離婚後も父母がともに子の親権を持つ「共同親権」を導入する民法改正案について、法務省は今国会への提出を見送る方針を固めた。共同親権は別居親が子の養育にかかわりやすくなるとされる一方、家庭内暴力(DV)や虐待から逃れにくくなるとの懸念もある。自民党などの推進派は早期提出を主張し、法務省も今国会提出を視野に準備を進めていたが、結論を出すのは時期尚早と判断した。法相の諮問機関である有識者らの法制審議会部会で議論を続ける。 

両案併記の中間試案

 現行民法は、婚姻中は子の親権は父母双方にあり、離婚後はどちらか一方にする単独親権を規定する。共同親権の導入論が浮上したきっかけは、親権制度の一部を見直す2011年の民法改正時に、国会の付帯決議に検討が明記されたこと。法制審部会は一昨年から議論を始め、昨年11月に単独親権を残して共同親権を導入する案と、単独親権のみを維持する案を併記した中間試案をまとめた。

 併記になったのは、部会内で賛否が割れたためだ。推進派の委員は、親権を失った別居親が望んでも子育てにかかわれない例を挙げ、単独親権には課題が多いと指摘。他方、ひとり親家庭を支援する委員らは、進学や医療などの子の重要事項を同居親だけで決められなくなり、子に悪影響が及ぶとして反対した。

自民・推進派の介入も問題に

 法務省は今月17日までの約2カ月間、法案化の前提となる中間試案へのパブリックコメント(意見公募)を実施。現時点で内容は公表していないが、結果も踏まえて今国会への提出見送りを判断した。

 パブコメを巡っては、回答者が判断材料にする参考資料の作成に、自民党の推進派議員が関与するなど政治的介入も明らかになっており、議論のあり方も課題となっている。 

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年2月28日