なぜ川崎市は全国初の「子どもの権利条例」をつくれたのか 自治体向け勉強会で解説
「子どもの権利条約」批准30周年
今年は国連の「子どもの権利条約」を日本が批准して30年の節目を迎える。条約に基づく「子どもの権利条例」を制定する自治体が増える中、2000年に全国で初めて条例をつくった川崎市の経験を伝えるため、市職員が16日、東京都内の会場とオンラインで開かれた自治体職員向けの勉強会に登壇。「川崎市子どもの権利に関する条例」制定の過程や条例に基づく事業などを紹介し、その意義や効果を語った。
90年代からの「地域教育会議」が土台に
子どもの権利条例制定に向けた動きが広がる背景には、国が2023年4月に子ども施策を総合的に進めるための「こども基本法」を施行したことがある。基本法には子どもの意見を尊重することなどが盛り込まれており、子どもの権利保障への関心が高まっている。
勉強会のテーマは「制定プロセスに子どもの声を聴き、活(い)かすには」。川崎市こども未来局青少年支援室子どもの権利担当課長の佐藤直子さんが、川崎で早期に条例制定が実現した背景として、1990年代から地域住民らでつくる「地域教育会議」が各地にできていったことを紹介。「子どもたちの教育について市民が参加する土壌が醸成され、子どものための条例をつくろうという機運が高まった」と話した。
条例制定に向けて、1998年から約2年の間に計約200回の会議が開かれ、子どもや教員、研究者などを含め、市民らのべ10万人以上が参加して意見を交わしたという。
条例に基づき、子どもの声を反映できる
佐藤さんは、条例に基づく事業として、「川崎市子ども会議」を通じて、子どもの声を市政に反映する仕組みがあることや、公設民営の遊び場「川崎市子ども夢パーク」が居場所として定着していることなど具体的な効果についても説明した。
自治体の子ども関連政策を研究する東京経済大学の野村武司教授も登壇し、こども基本法では、子どもの声を代弁する仕組みを整えることや、子どもの権利を保障する大人の責務を確認することが自治体に求められていると指摘。「子どもの権利条例をつくっていくことが必要」とした上で、子どもの権利に対する理解を広げていく活動などに「子どもたちの参加が大切」と話した。
勉強会は公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」(東京)が主催。全国約50の自治体から約90人の自治体職員らが参加した。