中学受験が気になったら必ず読んでおきたい、小説「翼の翼」が教えてくれるもの〈PR〉
「翼の翼」あらすじ
専業主婦、有泉円佳の息子、翼は小学2年生。興味本位で進学塾の全国テストを受けたところ、校舎長からすすめられ、中学受験に挑戦することになる。最大手の進学塾「エイチ」に入った翼は、男子四天王といわれる難関校を狙う。
有名私立の中高一貫校を受験した経験のある夫真治と、それを導いた義父と義母。中学受験にまったく縁のなかった円佳が、塾に、ライバルに、保護者たちに振り回され、世間の噂に、家族に、そして自分自身のプライドに絡め取られていく。
より一般的になってきた中学受験を舞台に、子を愛しつつも過度に期待してしまう親の普遍的な心情を余すところなく描いた、全編が心に刺さる凄まじい家族小説。難関中学の受験国語問題に多くの作品が使われ、自身も子どもが中学受験をした著者だからこその、圧倒的リアリティで迫る話題作。
「子どものために」の意味に向き合うことができる本
小5の娘の母親である東京すくすく編集チームのメンバーが「翼の翼」を読んだ感想です。
私も円佳と同じ地方の出身で、中学受験の経験はなく、首都圏の受験事情を自分ごと化できないまま、周りから漏れ聞こえる情報に耳を澄ましている状態です。
いつも悩ましく思うのは、「受験をするかしないかを決めるのは、親なのか子どもなのか」ということ。
本書でも父親が息子に最難関校を受験する意志があるのかどうかを迫る場面があります。想像するだけで、胸が張り裂けそうに苦しい場面です。全編を通じて、模試の結果や塾のクラス替え発表に大げさでなく命を懸けるような努力をする親子の姿に触れ、中学受験と向き合うことに恐怖さえ感じてしまいます。
子どものためにより良い教育環境を与えたいと思うものの、子どもに合った学校にめぐり会えるかどうかは数値化できない分、確信が持てないものです。親世代が偏差値偏重型の教育を受けてきた影響も否めません。
「本当に子どものためを思っているのかどうか」―。親自身の覚悟、そして子どもとの向き合い方を試されているのが中学受験なのかもしれないということに、この本を読んで気づきました。
「翼の翼」は、中学受験が気になってそわそわしている親の心構えを変え、背筋を伸ばしてくれる本だと思います。
「翼の翼」(光文社)
著者:朝比奈あすか(あさひな・あすか)
1976年東京都生まれ。2000年、大叔母の戦争経験を記録したノンフィクション『光さす故郷へ』発表。2006年「憂鬱なハスビーン」で第49回群像新人文学賞を受賞して小説家デビュー。ほかに『彼女のしあわせ』『不自由な絆』『人間タワー』『人生のピース』『君たちは今が世界(すべて)』『ななみの海』など。子どもの生きづらさに寄り添う作品は中学校の試験問題に出題されることが多く、「国語入試頻出作家」と呼ばれる。
提供:光文社