保育虐待を防ぐために「小さな芽の時期に摘むことが大切」
奥野斐 (2022年12月16日付 東京新聞朝刊)
「まさか保育所で虐待を受けているなんて…」。2年ほど前、1歳児のわが子が保育士にたたかれたり、「あっちに行け」と暴言を吐かれたりしたという保護者を取材しました。母親の涙声の訴えに胸が痛くなったのを覚えています。
先月末、静岡県裾野市の認可保育園で保育士3人が1歳児を宙づりにしたり、カッターナイフを見せて脅したりするなどの不適切な保育や虐待が行われていたことが分かりました。事実の把握後も公表していなかった園や市への憤りの声が聞こえてきます。その後も各地の園で保育士による虐待が発覚しています。
「東京すくすく」では、虐待を受けた子の親を取材した記事を2020年8月に掲載。2018年11月には「介護・保育ユニオン」が保育虐待について実施したアンケート結果や保育士の声を公開し、その後も現役園長に虐待をなくすヒントを尋ねたインタビューなどを発信してきました。今回の件を受け、こうした記事に新たなコメントが届いています。
インタビュー記事はこちらです。ぜひお読みください。
虐待や不適切な保育をなくすにはどうしたらいいか。都内の認可保育園の園長、河合清美さんは当時の取材に「小さな芽の時期に摘むことが大切」と強調しています。その上で、保育士らに向け、国の「保育所保育指針」を読むなどして子どもの発達に関する知識を得ること、業務の見直しや問題を一人で抱え込まないことを呼びかけました。
虐待の背景には、保育士1人がみる子どもの人数(配置基準)や、施設の安全性や保育内容をチェックする自治体の監査のあり方の問題も指摘されています。子どもの育ちを守るため、保育環境にいま一度、目を向けることが必要です。