子育て世代の救いになるのは、保護者と違う視点で見守る存在 「親が気付かないところをほめてくれた」温かい声かけが支えに

(2023年5月30日付 東京新聞朝刊)

 子育て世代の実情を伝える連載の【下】では、保護者がうれしいと感じた周囲のサポートを紹介します。東京すくすくと婦人之友社が共同で実施した「子育てアンケート」からは、具体的な手助けだけでなく、子どもに注がれる温かい視線や声かけに日々支えられている親の姿が浮かびます。

 ※アンケートは今年3月23日~4月6日の15日間、インターネット上で実施。中学生以下の子を育てる保護者202人から回答を得ました。

近所の人や、偶然居合わせた人でも

 家族以外で子どもに関わる人がいたことで「よかった」「うれしかった」と感じたことを自由記述で聞くと、保護者からは多岐にわたる回答が寄せられました。

 最も多かったのは、41人が挙げた「子どもへの温かい気持ちを感じる、子どもが見守られていると感じる」という回答でした。「親が気付かなかった子どもの良いところを探して褒めてくれる、伸ばしてくれる」(23人)が続きます。「うれしかったこと」として挙がったエピソードからは、近所の人や偶然居合わせた人からの言葉に強く励まされた保護者の様子が伝わってきます。

家では悪いことばかりに目がいって

 6歳の娘を育てる東京都の女性(50代、専業主婦)は「娘が幼稚園を卒園した時、商店街のおばあさんが娘を手招きして、『あなたはいつもあいさつをしてくれて、一番いい子だった』と力を込めて話しかけてくれた。家族以外の人に手放しに褒められ、娘は本当にうれしそうだった」と喜びます。3児を育てる神奈川県の女性(40代、公務員・団体職員)は、バスで子どもがぐずっていた時に同乗していた人が「『子どもは親の手を煩わせる時が必ずあるのよ。大人になって困らせる前に、今困らせてくれてよかったわね~』と温かく話しかけてくれた」とつづります。

 親とは違う視点で子どもを見守ってくれる人の存在は、親子関係の風通しを良くし、救いにもなっているようです。5歳と6歳の子を育てる山梨県の女性(30代、パート・アルバイト)は「家では悪いことばかりに目がいって怒ってばかりだけれど、周りの人は良いところを探して小さなことでも褒めてくれる。そのバランスがうまく取れてなかったら、子どもが駄目になってしまったかも」とし、「褒めてもらえることで親の私も成長に気付いてあげられる」と感謝します。

「頼れる場所がある」と知ることで

 1人で小さい子の世話をする時間が長い人は、常に気が張り詰め、自分が休む時間を取ることは後回しになりがちです。

 東京都の40代の女性は「偶然、NPOの預かりの場の前を通った時に『大丈夫?』と声をかけてくださり、赤ちゃんだった娘をそのまま1時間預かってくれ、産後初めて子どもと離れて休むことができた」と振り返ります。「専業主婦で、預けることの敷居を高く感じていたので、『預けていい』『休んでいい』『頼れる場所がある』と知ることができた大きな出来事だった」

ペアトレで「頼る力」を育もう 成育こどもシンクタンク

 今回、「子育てアンケート」に寄せられた子育ての困り事や望むサポートについての声を、子どもが笑顔になれる社会を目指す国立成育医療研究センター「成育こどもシンクタンク」のスタッフに見てもらいました。スタッフは「圧倒的に『手が足りない』という回答が多く、今の子育て世代の現実をよく表している」と受け止めていました。

 母子保健を専門とする研究者の竹原健二さんは「『手が足りない』と表現されることが多いが、『時間が足りない』ことの方が実は根本的な問題なのではないか」と指摘します。行政や自治体が一時保育などの支援を充実させるだけでなく、「働き方改革を進めて保護者が家事育児に関われる時間を増やし、家庭に子育ての基盤を整えないと解決しない」と投げかけます。

 社会全体が子育てへの理解を深めるために、保護者が子どもとの間に良い関係性を構築する方法を学ぶ「ペアレンティング・トレーニング」を、全ての人が学校教育を通して受けることも提案します。「それは、親になる人たちが、支援を受ける力や人を頼る力をつけることにもつながるはずです」

別冊 婦人之友でも紹介しています

 東京すくすくのサイトでは、婦人之友社が共同で行った「子育てアンケート」の結果を順次紹介していきます。アンケート結果を伝える記事の一覧ページはこちらです。

 5月15日発売の別冊 婦人之友「親も子も『ホッ』とできる居場所、あります」でも、アンケート結果と、子育て世代の声を受け止め、発信してきたすくすく編集チームのこれまでの歩みを取り上げています。