祖父母世代が子育て当事者を傷つけないために 「異文化交流」の意識を持ちましょう〈子育ての世代間ギャップ・下〉

(2023年5月11日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
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NPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長

タイトルカット 東京すくすく×婦人之友社「子育てアンケート」から

 子育てを応援するつもりの祖父母世代の言動が、子育て当事者を傷つけるケースは少なくありません。5月5日公開の(上)で紹介したように、善意が空回りし、孫も含めた子育て世代との溝を深めてしまうのは双方にとって不幸なことです。両者の行き違いを防ぐためにできることを、NPO法人「孫育て・ニッポン」理事長の棒田明子さん(55)に聞きました。

動く前に、まずは相手の意向を聞いて

 棒田さんはまず、「何をすべきか、すべきでないかに正解・不正解はない」と言い切る。子育てについての考えは、個人や家庭ごとに大きく違うほか、同じ言動でも受け入れる側のコンディションで受け止め方が変わるからだ。「だからこそ、『自分と同じ考え方の人はいない』ことを大前提に、丁寧なコミュニケーションを取るのが大事」

 祖父母世代が、育児や家事が大変だろうと思って手を出し、嫌がられてしまうこともある。「まずは相手の意向を聞いてみて」と棒田さん。何をしてほしいか、困っていることはないか、具体的に伝えてもらうよう尋ねると良いという。

 一方、子育てする人たちからは「本音を言えない。断れない」との声が聞かれる。棒田さんは、「そう思うのは関係を悪くしたくないと考えているから。でも、その助けが今は必要ないなら、断ってもいい。にこやかに感謝を告げ、『でも私はこうしたい』と伝えて」と勧める。

「家族なら分かる」と思ってませんか

 棒田さんは「家族」や「親子」は注意すべき関係性だと指摘する。「家族だから分かってもらえる、子どもは親の言うことを聞くもの、と思っていませんか。他の人になら気を使うところに土足で踏み込んでしまいがち」。祖父母世代が自分の考えを伝える時は「『私はこう思うけれど、最終決断はあなたたち親がすることだから』と付け足して」と助言する。

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子育て世代と祖父母世代のすれ違いを防ぐ秘訣について話すNPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長=横浜市戸塚区の「こまちカフェ」で

 特に、最新の情報を学びながら初めての子育てで試行錯誤する親に対し、祖父母が子育ての知識をアップデートしないまま持論を押しつけることには注意したい。「子育て世代は、一番信頼している親に否定されたとショックを受ける」。最悪の場合、絶縁状態になる家族も棒田さんは見てきた。

「祖父母手帳」で今の子育てを学ぼう

 そうならないために、棒田さんが勧めるのは、自治体主催の孫育て講座の受講だ。今どきの子育ての考え方などを伝える「祖父母手帳」を発行する自治体もあり、「孫育て・ニッポン」のサイトでもダウンロードできる。

 「どこまで踏み込んでいいか、祖父母世代はみんな悩んでいる」と棒田さん。秘訣は、余裕のある祖父母側が「異文化交流」と思って臨むことだという。「海外留学生を受け入れるホストファミリーの気持ちで。文化が違っても興味を持ち、理解しようとやりとりしますよね」

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