「塩には赤ちゃんがいる!」にがりの秘密を探ったよ【こども記者が行く!天塩編】
事前学習ばっちりのこども記者
エプロンと三角巾を着けた親子たち。初めに、天塩の鈴木恵社長のお話を聞きました。
「塩を作ったことがある人はいますか?」
手を挙げる人はいません。
「塩は海水を煮詰めて作ります。では、残った液はなんと言うでしょうか?」
「にがり!」
小学4年の川口かいさんが正解しました。
この日は最高気温36度超えの猛暑。講師を務めた営業本部の前原淑子次長が「厳しい暑さによる汗やおしっこで体の水分や塩分が失われます。子どもの体の70%が水分で、塩分を補給しないと熱中症になります」と解説しました。そして、伝統的な製法の歴史や、成分について紹介。事前に取材のポイントとして質問やメモを取る時のコツを聞いていた参加者は、熱心にノートに書き留めていました。
海と山の塩の違いは?質問次々と
「分からないことはどんどん聞こう」とのアドバイスから、こども記者からはたくさんの質問の手が挙がりました。「海で取れる海塩と、山で取れる岩塩の味や成分は違いますか?」との質問に講師は「皆さん、質問が鋭すぎてドキドキします」と感心しつつ「条件や温度、採取する場所によって量や成分が違ってきます。岩塩の場合は比較的、塩化ナトリウムの純度が高いものが多いです」と説明。会場では相撲の力士の写真が飾ってあったことから「なんで力士は塩をまくんですか?」といったユニークな質問も飛び出しました。
その後、いよいよ実験の時間です。天塩の調理師、石田康平さんの指導で、土鍋の中に濃縮した塩水を200ミリほど注ぎました。通常より濃くてしょっぱい塩水を指に付けて、ぺろっとなめてみると「うわっ、からい~!」「舌が曲がっちゃうよ」。顔をしかめたこども記者たちはお茶をたくさん飲んで口直ししていました。
泡の向こうにキラキラの結晶
土鍋に火を付けてしばらくすると、塩水からふつふつと泡が出て沸騰してきました。キラキラした結晶が浮いてきて、「きれーい!」と感激する声が。講師から「塩の赤ちゃんです」と説明があり、みんな不思議そうにじっと見つめていました。
煮詰めて浮き出てきた塩をお茶パックに入れ、「サラダスピナー」と呼ばれる野菜など食材の水気を切る道具をぐるぐる回して水分を切ります。さらに脱水できる機械でも水気を切ります。「遠心力だね」との言葉も飛び出しました。
できあがると拍手が上がりました。完成した塩は結晶になってキラキラ輝いています。口に入れた参加者は「サクサクしてる」「自分で作ったからおいしいね!」と感動もひとしお。小学4年の高野聡太さんは「今日来られなかったお父さんのため、仕事に持って行くおむすびを作ってこの塩をかけて食べさせてあげたいな」と話していました。お父さんも仕事を頑張れそうですね。
ここで残った水分が「にがり」です。温めた豆乳の入った器に注ぎ、スプーンでかき混ぜると固まりだして、豆腐になることも試しました。
できたて塩おにぎりでランチ
そしてお待ちかねのランチタイムです。炊きたてのご飯でおむすびを握り、できたての塩をぱらりと振ってぱくり。
「おいしーい!」
各テーブルから声が上がりました。
卵白と混ぜた塩で豚肩ロース肉全体を覆って、オーブンでじっくり焼いた「塩釜豚」のメニューは、「ごちそうなのに簡単。作ってみたい」と付き添った大人たちにも好評でした。
デザートは夏の味、スイカです。「塩をかけるとスイカの甘さが引き立ちます」と石田さん。塩を振りかけたスイカを大きな口でほおばると「本当だ!」。
塩のいろいろな「力」に、夢中になった子どもたちでした。
おなかがいっぱいになった後は、今日学んだことや驚いたことを新聞にまとめる作業です。実際の新聞を手に取ってめくりながら、一番大きな字で目を引く見出しの付け方や、記事を書くときのコツを学びました。
印象に残ったことを見出しに
塩を煮詰める作業の大変さや、美味しかった「塩釜豚」の作り方を書くなど、思い思いに新聞作りに挑戦しました。小学1年の乾ひかりさんは「塩が赤ちゃんから大人になった」と面白かったことを記事に表していました。
盛りだくさんとなった体験イベント。小学4年の西田和駿さんは「塩って今まであんまり気にしていなかったけれど、この機会で歴史や使われ方が分かって勉強になって楽しかった。これからも塩をいろんな食べ物に入れて使っていきたいです」と満足そうでした。
取材のアドバイス役を終えて
塩には色々な「力」や使い方があり、料理にも健康にも欠かせないことを学んだ子どもたち。
食べることは体を作り、体を元気にすること。自ら口にするものを自分の手で作った、その味は格別だったようです。会場に来られなかった父親やきょうだいを思って、塩を使った料理を食べさせたいという子も多くて心が温まりました。
目を輝かせて次々と質問が飛び交う様子と、「塩には赤ちゃんがいる!」と喜ぶ、みずみずしい感性が刺激になった1日となりました。