小学生15人が学んだ気候変動と生物多様性 大好きなあの動物も絶滅危惧種なの!?【こども記者が行く!環境再生保全機構編】

東京新聞の子育てウェブメディア「東京すくすく」と独立行政法人環境再生保全機構(ERCA:エルカ)による体験イベント「こども記者が行く!気候変動と生物多様性について考えよう!~今、わたしたちの目指す未来は、過去(むかし)の地球!?~」が8月20日、東京都千代田区の東京新聞本社1階ホールで行われました。子どもたちは地球温暖化や絶滅危惧種の現状について話を聞き、地球環境を巡る課題をテーマとした新聞づくりに挑戦しました。

「心が動いたこと」を記事に

会場に集まったのは都内の小学生と保護者15組。まずは東京新聞・新聞開発室の勝山友紀(ゆうき)さんから、これから始まる講義を題材にした新聞の作り方について教えてもらいました。

「皆さんの心が動いたことを見つけてほしい」と勝山さん。新聞づくりは、書き手の「心が動く」が原点。「こんな気持ちになった時はノートに書いて」とアドバイスしました。

 

「びっくりした、驚いた」

「ぷんぷん怒った、許さない、ひどいと思った」

「かわいそう、悲しいと思った」

「良かった、うれしいと思った」

「なぜ? もっと知りたいと思った」など。

温暖化をもたらした犯人は…

 この後、エルカ職員・髙地里奈さんの講義に移ります。

SDGsについて説明する高地里奈さん(右から3人目)

 地球の気温は19世紀の産業革命以降、急上昇。髙地さんは気温変化のグラフを示し、「このグラフの形、何かに似ていると思いませんか?」と子どもたちに問いかけます。

そこで会場に運ばれてきたのが長い棒。「何の棒か分かる方いますか?」との質問に、子どもたちは「アイスホッケー!」と声をそろえました。アイスホッケーのスティックを横にすると、先端部分が急角度で右肩上がりになっているように見えます。

アイスホッケースティックを示す職員

「(グラフの形は)ホッケースティック曲線と言われています。温暖化は私たち人間に責任があると言われています」と髙地さん。国連のアントニオ・グテーレス事務総長が昨年7月、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と発言したことを紹介しました。

涼しい色で熱中症対策

 次はクイズです。髙地さんが「何色の洋服が一番涼しいと思いますか?」と質問すると、さまざまな色を挙げる子どもたちの声が飛び交いました。

正解は「白」「黄色」「赤」の順で涼しく、「黒」「緑」は暑くなりやすいとのこと。「外で遊ぶ時、シャツの色も考えてもらえるといいです」。熱中症対策の観点から呼びかけました。

生物多様性の大切さについて訴える谷遥さん(右)

あの魚も絶滅のおそれ

もう一つのテーマ「生物多様性」の講師役は、エルカ職員の谷遥(はるか)さん。生物多様性が失われると、人間も生きていけなくなることを説明し、「私たちも生物多様性の一部。すべてはつながっています。私たちの行動が未来を変えていく、ということを覚えて帰ってほしい」と強調しました。

ここで、背中に絶滅危惧種と書かれたTシャツを着たエルカ職員の「ムキムキマッチョ」こと、増子友広さんが登場。絶滅危惧種は世界で4万5千種以上ともいわれ、生物全体の27%以上を占めることを説明。レッサーパンダやホッキョクグマ、ジュゴン、ラッコ、オオクワガタ、ホタルなど子どもたちにも人気の動物や昆虫が含まれていると知り、思わず「えっ!」と声をあげる子もいました。

絶滅危惧種について説明する増子友広さん

「この魚は分かるかな?」。絶滅危惧種のスライド写真を見て、「マグロ!」と一発で正解したのは小学1年生の藤田波美さん(8)。クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロが絶滅危惧種になっていると知り、「おすし屋さんで知っている。大好きなレッサーパンダもいなくなるかもしれないと聞いて悲しかった」と話しました。

環境に配慮して作られた製品であることを示す「エコラベル」の説明も。牛乳パックは6本リサイクルすると、トイレットペーパー1個に生まれ変わるそうです。親子でエコラベルなどが付いた環境に優しい商品を選ぶことの大切さを学びました。

牛乳パックを使ったうちわ作りに取り組む親子

ワークショップは、親子で牛乳パックや色紙を使った工作です。ウサギ、コアラ、パンダ、カエルなど思い思いの形のうちわを作りました。

私たちにできること

いよいよ新聞づくりの時間です。

講師の話で印象に残ったことをテーマに親子で相談。

「マグロが食べられなくなる!?」

「やせたシロクマ発見」

「地球沸騰化」

など、子どもたちの新聞にさまざまな見出しが躍ります。

それぞれ「心が動いたこと」を記事にする子どもたち

「こおりがとける!!」という見出しで新聞をまとめた小学1年の村形草太さんは、えさに困り、やせ細ったシロクマの写真に衝撃を受けました。文章を書くのが好きで、「書くのが楽しかった」と満足そうに話していました。

小学1年の荒尾凜さんが作った新聞の見出しは「きいろはすずしさ」。洋服の色によって体感温度が変わるという話が印象に残ったそうです。「黒がとっても暑い。冬は黒がいいと思う」と説明してくれました。

カラフルなシャツを描いた荒尾凜さん

「にんげんはせいぶつたようせいだ」を見出しにとった小学2年の楯岡和華(あいか)さんは「初めて新聞を作ったのでうれしい」とにっこり。

弟と新聞づくりに取り組んだ楯岡和華さん(左)

「地球はもともと豊かでやさしい星でした。未来はいまの私たちの行動にかかっているのです。命の循環を止めないよう今、行動することが大切です」と谷さん。マイ行動宣言を紹介し、「簡単なところから取り組んでほしい」と訴えました。

取材のアドバイス役を終えて

今年の夏休みは子どもを外に連れて行くのがためらわれるくらい暑い日が多く、この日もほぼ猛暑日に近い気温になりました。自分たちが子どもだった時代より随分暑くなったと感じている親は多いでしょう。

子どもたちの作った新聞からは、それぞれ地球温暖化の影響についてあらためて驚きや危機感を抱き、一人一人ができることについて真剣に考えたことが伺えました。

慣れない新聞づくりで文章を考えるのに悪戦苦闘し、「新聞記者の大変さが分かった」と頭を抱える子もいましたが、指導役の新聞記者の助言で書きたいことがクリアになるにつれ、鉛筆を持つ手が動き始めたようです。皆さんの自由研究の一助となるとうれしいです。