東京すくすくは6周年を迎えました 読者のみなさまへのお礼と編集長交代のお知らせ

「東京すくすく」開設6周年を記念し、9月に開いたイベント「子育て中だから考える自分のこと、子育てのこと」

東京新聞の子育てウェブメディア「東京すくすく」は、9月で開設から6年となりました。記事を読み、コメントや取材依頼を寄せ、イベントに参加し、すくすくとつながってくださったみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。

こども家庭庁が発足して1年半。これまで「票」を持っていないから、政治の世界で後回しにされてきた子どもの声を聞き、こども施策を進めるための「こども基本法」が成立しました。

本当に子どもが笑顔になれる社会づくりが進んでいるのか、安心して子育てできる社会になっているのか。すくすく編集チームは、読者のみなさんと一緒に考え、声を上げていきたいという思いを新たにしています。6年の節目に、編集長を今川綾音から3代目の浅野有紀に交代します。

あなたの声が社会を変える 前編集長・今川綾音

産後クライシスについて本音を語り合った「すくすく座談会」。左から2人目が前編集長の今川綾音

原点は、自分の後悔と反省と納得

「新聞を取っていない子育て世代にもニュースを届けたい」という思いでこの「東京すくすく」を提案した2016年の冬、末っ子はまだ2歳、第1子の長女も小学2年生でした。

出産後に夫との関係が冷え込む「産後クライシス」、復職したいのに見通しが立たない保育園や学童の待機児童問題、子どもの発達や病気、PTAの役員・委員の強制…。どれも自分ごとでした。

自分の悩みがそのまま取材につながりました。「こうなる前に知りたかった」「この情報があったら迷わなかったのに」という自分の後悔と反省と納得が、記事の根底にはいつもあります。

8年がたち、末っ子は小学4年生、長男は中学2年生、長女は高校1年生になりました。「小学校に入ったらゴール」との期待は大きく外れ、一難去ってまた一難の子育てが続いていますが、今日も「おはよう」「おやすみ」と子どもたちに言えること自体が奇跡だとも思います。

「ママ向けのサイト」ではなく

今、3年間の編集長の任を終え、この「東京すくすく」を企画したときに目指した社会に少しずつ近づいているな、と感じています。

「子育てがつらい」と感じる背景のひとつには、女性の肩にかかる育児負担が大きすぎること、そして男性が一緒に育児をしたいと思っても、長時間労働などの働き方がそれを許さないことがあります。

「東京すくすく」は、女性が孤独な育児から解放され、男性も子育てに存分に関われる社会を目指しました。「ママ向けのサイト」ではなく、「子育て中の人が、十分に子育てに関われるような暮らしや働き方をするために、一緒に考え、声を上げていくサイト」をつくってきたつもりです。

すくすくの発信をフォローしてくださっている方たちの中には、政治家や子育て支援に関わる方、保育士さんや学校の先生も多くいます。そうした影響力の大きい立場にある方や、子どもの育ちに関わる方たちが、すくすくが報じる子育ての最新の取り組みや子育て世代の悩みを、それぞれの現場に持ち帰り、現状を変えよう、良くしよう、と動いてくださっているのを日々肌で感じ、心強く思います。

私たち「東京すくすく」が取り上げる子育て中のみなさんの声や、各地の先進的な取り組みが、影響力のある人たちの手によって広がり、届くべきところに届き、形になる。このことを、読者のみなさんにも強く意識していただき、今後もすくすくに声を届けてほしいです。

あなたの声が社会を変える。そのサポートを、これからもすくすくはしていきます。

私がバトンを渡す新編集長の浅野有紀記者は、前任地のさいたま支局時代から、子どもや子育てについて精力的に取材し、発信してきた記者です。読者のみなさんとつながりながら、幸せな子育てができる社会を探りたいという強い意志を持っています。子どもや、子どもの育ちに関わる人たちが健やかに生きられるよう、これからも読者のみなさんと一緒に走っていけますように。

子どもが子どもらしくいられる社会に 新編集長・浅野有紀

ガミガミ母ちゃんを卒業したい

3代目編集長になりました浅野有紀です、どうぞよろしくお願いします。

35歳、一児の母です。もう長女は3歳半を過ぎましたが、産後の「ガルガル期」から抜け出せずにいます。

夫「おいしそうなステーキ肉を買ったから、明日の夜に食べてね」。私「え、帰ってこないのが当たり前みたいに言わないで。あなたが焼いてもいいんだからね」。数日前の夫婦の会話です。

もやもやする原因は、保育園のお迎えです。育休明けの1年間は私が毎日お迎えで、すくすく部に異動してからは、偶数日と奇数日でお迎えを分担し、念願の平等だ!と思ったら、この夏の夫の部署異動でまた私がほぼ毎日お迎えに行くことに不満を持っています。

正直、ワンオペをした方が子どもを早く寝かせられます。それでも、私は産後に脳出血になり、第2子を望めなかったので、わが家は最初で最後の子育てです。夫婦で協力して、「早く走って迎えに来てね」という娘の期待に応えたいという思いが捨てきれません。

働きながら子育てしやすい社会を

先月の東京新聞140周年イベントで、すくすくが開いたランチ交流会でのことです。来場くださった人事院勤務で4児を子育て中の男性に「こども家庭庁の予算の概算要求の記者説明会が午後5時スタートだった」と伝えると、「全然(同庁が掲げる)こどもまんなかじゃないじゃないですか」と驚かれました。その日は6時過ぎに終わりましたが、取材した私は通常保育のお迎えに間に合いませんでした。

後日、加藤鮎子前こども政策担当相の会見で、「こども大綱に働き方改革を盛り込んだこども家庭庁が、率先して説明会の時間を前倒しし、働きながら子育てしやすい社会を醸成してもらえないか」と発言しました。「できることはないか相談します」との回答でした。広報からも数日後、「午後5時には終われないか」と各課に要望したと聞きました。

記者の質問に答える加藤鮎子前こども相

人事院の男性が第1子を育てたスイスでは、仕事を早く終えて幼い子どもと過ごす時間を大切にするのが当たり前だったそうです。そんな社会に日本も変わってほしいです。

今回の交流会に来られなかった方々とも、オンライン環境を整えて、お話しする機会を持ちたいと考えています。また、教育虐待やいじめに関する記事のコメント欄には、子どもたちから「これって虐待でしょうか」「いじめられています」という悲痛な声が届きます。自分の思いを表現しても誰にも傷つけられない、子どものための居場所もすくすくの中につくっていきたいです。

これからも「東京すくすく」をどうぞよろしくお願いします。