「魔女の宅急便」角野栄子さんの世界が楽しめる児童文学館 2023年夏、江戸川区に誕生 隈研吾さん設計

加藤健太 (2020年10月28日付 東京新聞朝刊)

児童文学館の完成イメージ図。館内は「わくわくして本の世界に入ってほしい」という角野栄子さんの思いが込められている(江戸川区提供)

 映画「魔女の宅急便」(スタジオジブリ製作)の原作者・作家角野栄子(かどの・えいこ)さん(85)の世界観に包まれて絵本を楽しめる児童文学館が、東京都江戸川区に誕生する。27日に披露された館内のイメージ図は、角野さんが好きだという「いちご色」一色。設計は、新国立競技場などを手掛けた建築家隈(くま)研吾さん(66)の事務所が担当する。 

オンラインで発表に参加した角野栄子さん

「入った時に『あっ』と思わたせい」

 角野さんはオンラインで記者会見し「驚きから想像力が生まれる。入った時に『あっ』と思わせたかった」と語った。子どもたちには「本をたくさん読んで言葉の豊富さを見つけて」と呼び掛けた。

 施設は3階建て、1600平方メートル。外観は白で統一し、屋根は江戸川区の花「ツツジ」にちなむ花びら形。2023年7月の開館を予定している。

児童文学館の完成イメージ図。「自然豊かな公園の丘に溶け込むように」と隈研吾さんが設計した(江戸川区提供)

 神奈川県鎌倉市在住の角野さんは、幼少期から20代前半まで江戸川区北小岩で暮らした。児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞を2018年に受賞したのをきっかけに、江戸川区は児童文学館の建設を決めた。

屋根は花びら形、館内は「いちご色」

 公表された児童文学館の完成イメージ図では、自然との調和にこだわった真っ白な外観が、鮮やかな緑色の丘に浮かび上がった。 

 設計した隈さんはオンライン記者会見で、外観について「白はさまざまな色を引き立てる。周りの緑も、いちご色の世界もきれいに見える」と説明。建設地の区立なぎさ公園が、江戸川区の花であるツツジの名所として親しまれていることを踏まえ、建物の屋根は花びらの形を取り入れた。

児童文学館の完成イメージ図。隈研吾さんの事務所が設計し、屋根の形は花びらをイメージ(江戸川区提供)

 隈さんのこだわりを聞いた角野さんは、魔女の宅急便にちなんで「ほうきで飛んで(上空から)見てみたい」とユーモアたっぷりに応じた。「今の子どもたちは与えられることに慣れている。本の楽しさを自分で見つけてほしい」と強調した。

緑を眺めながら 屋外テラスでも読書

 3階建ての建物はなだらかな「展望の丘」に沿うように造り、屋外テラスを含む複数の読書エリアを設ける。斉藤猛区長は記者会見で「子どもたちが自由に場所を選び、寝転んだり座ったりしながら、国内外の作品を楽しんでほしい」と語った。

斉藤区長とともにオンラインで記者会見する角野さん(左)と隈さん(右)。模型もお披露目された=江戸川区で

 1年を通して花を楽しめるようにするほか、交通アクセスを改善するため、駅と児童文学館の間にシャトルバスを走らせる構想も明らかにした。新型コロナウイルスの感染予防対策として、入館する際の手洗い場などを設ける。

 江戸川区によると、建設地は区立なぎさ公園(南葛西7)内の丘の裾野を予定したが、設計側の意向で中腹の傾斜地に移し、広さも1.3倍とした結果、総工費は当初の13億円から約30億円となった。建物と展示品に23億円を、公園内の整備に7億円を見込んでいる。2021年度に着工する。開館は2022年度の後半を目指すとしていたが、設計で工事規模が拡大し、約半年遅れの2023年7月にずれ込んだ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年10月27日

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年10月28日